2011 Fiscal Year Research-status Report
二酸化チタン薄膜の還元によるTinO2n-1薄膜の合成と物性評価
Project/Area Number |
23550204
|
Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
大矢 豊 岐阜大学, 工学部, 教授 (80167311)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | チタニア薄膜 / Ti3O5 |
Research Abstract |
チタンテトライソプロポキシドを原料とし、これとTMAOHを反応させさらに水を加えることにより、チタン酸ナノシート水溶液を合成した。またシリコンテトラエトキシドをTMAOHによって加水分解し、シリカゾルを合成した。チタン酸ナノシート水溶液を単独で、あるいはシリカゾルと混合して前駆体溶液を合成し、サファイアC面基板上にスピンコーティングし、乾燥後熱処理した。 コーティング後600℃または800℃で30分空気中で加熱する操作を5回繰り返した後、結晶相を同定した。この結果チタニア単独膜およびシリカとチタニアを1:1になるように混合した膜で、アナターゼ相が結晶化していることが確認できた。これらの膜を窒素-水素混合気流中で1200-1250℃、10時間熱処理してチタニアの還元を行った。その結果、チタニア単独膜では1200℃、20%水素の条件ではルチルのみが、水素濃度を30%とするとルチルとTi3O5の混合膜が、さらに35%で熱処理するとTi3O5単相の膜が得られた。これに対してシリカとチタニアを1:1で混合した膜の場合は、1200℃20%水素で既にTi3O5単相となり、こちらの膜の方が還元しやすいことが明らかになた。これはアルカリ触媒で加水分解したシリカ膜は多孔質になりやすく、容易に還元されたものと思われる。また複合膜では還元の程度によって配向構造が異なってくることも明らかになった。 このシリカ-チタニア複合膜を顕微鏡で観察すると、800℃の熱処理でシリカ膜中に十字のアナターゼの結晶の析出が観察された。この十字の結晶は熱処理温度が高くなると大きくなり、還元されてTi3O5になっても同様の形状であった。さらにTi3O5結晶は反射率が大きくなり金属的に変化していることも明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
還元熱処理を行うことで、研究の初期段階であるTi3O5化合物の合成に成功した。これはチタニア薄膜単独からも合成することができたし、またシリカ-チタニア混合膜を還元することによっても合成することが可能であった。従ってここまでの進行状況は概ね計画通りである。 しかしもう一つの目標である、ナノサイズのチタニアをシリカ中に分散することは、特に高温熱処理で、達成されていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
ナノサイズのチタニアをシリカ膜中に分散することを試みる。これには、1.シリコンテトラエトキシドの加水分解に酸触媒を用いる、2.低い温度で熱処理して、チタニアの粒子成長を遅らせシリカを緻密化する、3.チタニアの濃度を低くする、4.チタン酸ナノシートではなくチタン-DEAキレート溶液を用いる、などが考えられる。これらを単独であるいは組み合わせて実験し、微細なチタニアが分散したシリカ-チタニア複合膜の合成を行う。 十字に成長したチタニアは非常に興味深い。結晶相はアナターゼ、ルチル、Ti3O5と変化しても同じ形状の結晶である。この方位の特定を行い、トポタクティックな反応であるかなどを検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費としては、チタンアルコキシドやシリコンアルコキシドなどの原料・試薬、またサファイア基板などの単結晶基板やシリカガラス基板、また還元熱処理用の水素ガスや窒素ガスの購入に充てる。さらに一般的なガラス器具や発熱体などの消耗品を購入する。
|