2012 Fiscal Year Research-status Report
二酸化チタン薄膜の還元によるTinO2n-1薄膜の合成と物性評価
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23550204
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
大矢 豊 岐阜大学, 工学部, 教授 (80167311)
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Keywords | Ti3O5 / 酸化物薄膜 / 還元処理 |
Research Abstract |
3価のチタンイオンを含む薄膜を合成するために、原料として三塩化チタン水溶液を用いた。この溶液から酸化チタン薄膜を得るためにTMAOHやシュウ酸を加えて安定化を試みたが、TMAOHを加えた場合は容易に空気酸化され、淡青色溶液の上の方から白色に変化していった。一方シュウ酸を加えた場合には茶褐色の沈殿が生成した。この沈殿は色から考えて空気酸化されていないと思われる。この沈殿について、窒素雰囲気中で加熱処理を行った結果、低温ではアナターゼ、温度が高くなるとルチルが結晶化し3価のチタンが早い段階で4価に酸化されてしまうことが明らかになった。この酸化を抑制する目的で1%水素を含む窒素中で加熱処理を行ったが同様の結果であった。加熱した沈殿の色は300℃で黄土色、400℃と500℃で黒であった。酸化チタン粉末の色が黒になっても結晶としては4価のチタンイオンの酸化物と同じである。還元状態で一部が3価に還元されても同じ結晶相であり、欠陥の生成によって黒くなるものと思われる。 さらに3価のチタンを安定化させる、または一度生成した4価のチタンイオンを還元する目的で水素30%を含む窒素中で1200℃での加熱処理を行った。この条件は昨年度T13O5薄膜を得た条件と同じである。この場合はルチルが主成分であり、若干のT13O5が生成していた。この生成量比は昨年度の薄膜の場合より少ない。これは薄膜と粉末で存在する酸化チタンの量が異なり、TiO2の量が多かった粉末の場合が還元された量の比が少なかったためと思われ、昨年の条件でも平衡には達していないことが分かった。 3価のチタンがプロセスのどの段階で4価に酸化されるかをXPSを用いて検討した。その結果は100℃での乾燥段階で既に3価のチタンが確認されないというものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
水素を用いる還元処理に変わり、原料に3価のチタンイオンを含む溶液を利用したが、空気中で容易に酸化して4価のチタンイオンになってしまった。また、4価のチタンイオンと3価のチタンイオンでは溶液の作製可能性が全く異なっていることがわかり、4価のチタンイオンと同様の条件では薄膜が得られないこともやや遅れている理由である。 しかしながら、Ti3O5を合成する条件については、昨年度の結果を確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
4価のチタンイオンを含む溶液を作製する。具体的にはチタンテトライソプロポキシドを原料とし、必要最小限のTMAOHを加えて溶液を合成し、ディップ法によって薄膜を合成する。必要最小限のTMAOHはチタンイオンに対して0.6倍モルとなる。さらにこれとシリコンテトラエトキシドを加水分解することによって合成するシリカゾルとの混合をおこなう。この場合の触媒としてのTMAOHの量が多すぎると途中で分相するため、この場合も必要最小限のTMAOHを用いる。薄膜の還元は低酸素分圧及び水素還元をもちいる。酸素分圧の制御によって還元が速やかに進行すれば平衡に近い状態での3価のイオンを含むチタン酸化物の合成が可能になるが、平衡に近い条件では反応速度が非常に遅くことも危惧される。これに対して水素還元を用いることで、速やかな反応進行が期待できるが、還元が強い状況では過還元されル可能性が高い。これらの長所と短所を検討して最適な条件を探る。 還元した状態でのTi3O5粒子の大きさと分布を観察する。薄いフッ化水素水溶液によるエッチングやTEMによる観察を試みる。最終的にはHe-Neレーザーによる相変化について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
チタンテトライソプロポキシド、シリコンテトラエトキシド、TMAOH水溶液等の原料の購入費用、石英ガラス基板、耐熱ガラス基板等の経費、ガラス器具、発熱体等の消耗品などに使用する。
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[Journal Article] Theory and the experimental confirmation of the local electronic structure of the multiferroic PbVO3, a new member of PbTiO3 family, studied by X-ray near edge absorption structure2012
Author(s)
S. Alam, J. Ahmad, Y Ohya, D. Chungli, C.-C. Hsu, J.-F. Lee, M. Shima, K. Miki, S. S. Al-Deyab, J. Guo, C. Nishimura
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Journal Title
J. Phys. Soc. Jpn
Volume: 81
Pages: 074709-074709
DOI
Peer Reviewed
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