2012 Fiscal Year Research-status Report
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23550211
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
森山 廣思 東邦大学, 理学部, 教授 (10126188)
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Keywords | 有機半導体 / 分子素子 / フラーライド / 界面制御 / 有機デバイス |
Research Abstract |
本研究は、電子材料開発のキーとなる概念であるπ共役系物質による界面修飾、とりわけフラーライド半導体による分子素子の界面制御による、新たな電子デバイスの開発を目指している。これまでの研究で、不安定なラジカルであるフラーライド(fulleride)と総称されるC60フラーレンアニオンラジカルを嵩高い対カチオンを用いて安定な分子性の塩として取り出す手法を確立し、電解結晶成長法により、構造解析や物性測定に適した、いくつかの高品位のC60- アニオンラジカル塩単結晶を得てきた。結晶構造と物性発現の観点から、分子性フラーライド単結晶の物性を探究するなかで、フラーライド単結晶に特異な低次元構造が存在することを、トリフェニル色素カチオンを用いて初めて見いだすことに成功した。フラーライド単結晶が示す、このような1次元カラム構造やジグザグ構造が、どのようなカチオンの時に実現するのか、普遍的な構造なのかを探索するため、電解結晶成長法により、フラ-ライド単結晶の育成を試みる。ナノ構造がフラーレンアニオンラジカル集合体の結晶相において形成されることは、その伝導挙動とならんできわめて興味深い。トリフェニルメタン系色素以外の色素系カチオンに関しても、このようなフラーライドナノウィスカー構造が一般的に見いだされるかに関して、フラーライド単結晶を育成し、結晶構造を明らかにする。また、予備的な測定結果から、このようなフラーライド単結晶は有機半導体的性質を有していることから、分子素子の界面制御に用いることができると考えられる。伝導挙動など物性測定に関しては、直流4端子法を用いた単結晶伝導度測定を行う。電極/有機界面の界面制御に関して、薄膜同定手段として必須の光導波路を用いたエバネッセントUV/VIS表面・界面分光測定装置による測定系を確立する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に得られた結果を基にして、フラーライド分子性結晶育成を継続し、新たにルシゲニンやジフェニルナフチル系色素カチオンを有機カチオンとする安定なC60アニオンラジカル塩が得られ、結晶構造や伝導度物性を検討した。ルシゲニンを有機カチオンとする系では、ルシゲニンがジカチオン、C60がジアニオンとなる、これまで得られているC60モノアニオン系とは全く異なる非常に興味深い系が新たに見いだされた。また、有機薄膜太陽電池への応用を目指した新たなPCBM類縁体を合成し、変換効率の測定結果を得ることができた。さらに、非PCBM類縁体として、新規物質であるアルコキシフラーレンC60(OR)8、C60Br(OR)5 (R=Me, Et, Pr)の合成に成功し、2件の特許を申請をすることができた。森山廣思、内山幸也“フラーレン誘導体及びその製造方法、並びにその利用” 特願2012-194209 (2012. 9. 4 出願)、特願2013-46948 (2013. 3. 8出願) 今後これらの結果を論文として公表する予定である。また、これらの新規フラーレン化合物に関してもフラーライド分子性結晶育成する。 一方で、これらのフラーライド結晶を有機薄膜系へ導入し、その薄膜の伝導性を調べる計画は遅れていると言わざるを得ない。とくに、新たな機能性発現の探索として、当初計画していた、金ナノ粒子や量子ナノドットを介在させることによるフラーライド分子性結晶の物性に与える影響の検討には、現在まだ至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23、24年度に得られた結果を基にして、フラーライド分子性結晶育成を継続するとともに、このフラーライド結晶を有機薄膜系へ導入し、その薄膜の伝導性を調べる。また、平成24年度に新規物質として得られた非PCBM類縁体であるアルコキシフラーレンC60(OR)8、C60Br(OR)5 (R=Me, Et, Pr)に関しては、安定13C同位体C60を用いて13Cエンリッチした生成物を得、INADEQUATE法により、13C NMRから完全帰属を行い、化合物の同定を完了する。またさらに、新たな機能性発現の探索として、金ナノ粒子や量子ナノドットを介在させることによるフラーライド分子性結晶の物性に与える影響に着目し、これらのナノ粒子が構造や物性にどのような変化を及ぼすかどうか検討する。とりわけ金ナノ粒子系ではプラズモン共鳴を光導波路測定によって分子デバイスの機能解析を進めることができるので、初年度導入したエバネッセントUV/VIS表面・界面分光測定装置を有効に活用することによって、表面プラズモン共鳴光導波路分光装置から得られる知見により界面制御に関して新たな指針を得る。有機半導体であるフラーライドナノワイヤーを界面修飾に使用し、高効率な電子デバイス特性開発の指針を得る。とりわけ、有機半導体への応用に観点を絞って、電子デバイスとしての可能性を探究する。得られた結果をとりまとめ、成果の発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、必要な試薬類、ガラス器具類に使用するほか、測定機器の正確な更正を目指す。当該研究推進にあたって必須の伝導度測定装置に、大幅なオーバーホール修理が必要であることが、平成24年度末に判明した。しかし,年度内予算消化に間に合わなかったため、平成24年度の予算残を生じる結果となった。そのため、この伝導度測定装置の調整修理に使用することを優先する。最終年度にあたるので、得られた結果をとりまとめ、成果の発表を行うための経費とする。
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Research Products
(25 results)