2011 Fiscal Year Research-status Report
レドックス機能をもつ有機イオウ導電性ポリマーの創製とリチウム電池正極材への応用
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23550212
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
金澤 昭彦 東京都市大学, 工学部, 教授 (80272714)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 有機電子材料・素子 / 有機電極活物質 / レドックス導電性高分子 / ポリチエン / リチウムイオン電池 |
Research Abstract |
本研究では、二硫化炭素を原料として新規な有機イオウ系ポリマー(ポリチエン)を創製し、リチウムイオン電池用の正極材として応用することを目的とする。今年度は、これまでに申請者らが開発したリンイリド(トリアルキルホスフィンと二硫化炭素から得られる電荷移動錯体)の光重合によって得られるポリチエンの分子構造ならびに反応機構について検討した。まず、ポリチエンのIR スペクトル測定を行ったところ、500、1070、1410 cm-1付近にS-S、C=S、C=C結合に由来する振動吸収が観察された。また、元素分析の結果、CとSの比率がほぼ1:1で構成されていることが明らかとなった。これらの結果から、光重合によって得られる反応生成物は共役構造を有するCSポリマー(ポリチエン)であることがわかった。さらに、EPR測定を行った結果、いずれのポリマーも異方性のあるEPRシグナルを与え、g値も2.015であることからポリマー中に硫黄ラジカルが存在することが示唆される。これは、分子中におけるスルフィド結合の存在を示しており、合成したポリチエンが硫黄単体と同様にレドックス活性を有することが期待される。以上の結果を踏まえ、光重合によって合成したポリチエンを用いてリチウムイオン電池を試作し、その充放電特性について評価した。その結果、放電の初期容量が約800 mAh/g、充電が約1100 mAh/gと、現在広く用いられている既存のコバルト酸リチウム(LiCoO2)の電気容量密度(160 mAh/g)に比べて優れていることが明らかとなった。また、電位平坦部は、放電時で2.3 V付近及び2.1 Vと、硫黄単体系とほぼ同じ値となった。以上の結果より、光重合によって合成したポリチエンは、リチウムイオン電池用の正極活物質として応用できる可能性があることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、レドックス機能と導電性を併せもつ、新規な有機イオウ系ポリマー(ポリチエン)を、申請者らが開発した反応により合成し、諸物性を明らかにするとともに、リチウムイオン電池用の正極材料としての適用可能性を探求することを目的とする。当該ポリマーは、1)イオウ含有率が高く、活物質と電極材を兼ねるため高エネルギー密度化が可能、2)二硫化炭素(CS2)から得られる新材料、3)高い化学物理的安定性、といった利点を有する。以上の目的に基づいて、本年度は、1)光重合によって得られるポリチエンの分子構造の同定、2)ポリチエンの基礎物性の評価、3)ポリチエンを正極とするリチウムイオン電池の充放電特性の評価、の3つの項目について検討を行った。「研究実績の概要」に記載したように、研究計画に沿った成果を上げることができた。ただし、継続課題として、ポリチエンの電気伝導性の評価が残る。測定用のサンプル調製を工夫し、再現性の良い測定データが得られるようにする。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は、研究計画に基づき、1)ポリチエンの電池反応の反応機構の検討、2)酸化重合によるポリチエンの高効率合成法の確立、の2つの検討項目について重点的に研究を進める。まず、検討項目1)については、本研究で対象とするポリチエンの電池反応は、分子内あるいは分子間スルフィド結合の酸化還元反応に基づくことが期待される。そこで、分光電気化学測定と電子スピン共鳴(EPR)測定とを用いて、電池反応機構を解明し、新しい電池反応であることを実証する。また、検討項目2)については、従来の光重合によるポリチエンの合成では、光重合の弱点により大量合成は困難である。そこで、ポリチエンの高効率合成を目指して、新たな酸化重合反応を開発する。具体的には、酸化剤による化学的酸化重合法と電気化学的酸化重合法(電解重合)の2つのアプローチから試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「次年度使用額」は5115円であり、概ね計画どおりの予算執行を行うことができた。翌年度は、翌年度請求額に「次年度使用額」を含めて、研究計画に沿って予算執行する予定である。
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Research Products
(8 results)