2012 Fiscal Year Research-status Report
立体配座および立体配位を考慮した界面活性剤の自己組織化構造制御理論の構築
Project/Area Number |
23550217
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
酒井 秀樹 東京理科大学, 理工学部, 教授 (80277285)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂本 一民 千葉科学大学, 薬学部, 教授 (70537183)
酒井 健一 東京理科大学, 総合研究機構, 講師 (20453813)
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Keywords | 界面活性剤 / 光異性化 / 分子集合体 / 紐状ミセル / 吸着可溶化 / 光学異性体 |
Research Abstract |
1) アミノ酸系界面活性剤の自己組織化構造に及ぼす光学異性の影響の解析 光学活性分子であるN-アシルAla塩と水および長鎖アルコール混合系の自己組織体の構造が、ある組成で生成する液晶においてのみ分子由来の光学異性を反映した高次の不斉構造を生成するという現象について、その機構解析を行った。本年度は、キラル界面活性剤として、N-アシルAlaのエステルを用いた系について、cyro-、Freeze Fracture透過型電子顕微鏡を用いたキラル液晶構造の直接観察、ならびに小角X線散乱(SAXS)による構造解析を行った。 2) アゾベンゼン修飾界面活性剤を用いた光粘性制御系における会合体構造変化機構の解析 我々は、カチオン界面活性剤であるセチルトリメチルアンモニアブロミド(CTAB)と可逆的にtrans/cis 異性化を示す光応答性界面活性剤であるAZTMAの混合水溶液中での溶液粘性の光制御についてこれまで報告してきた。本年度は、有機溶媒中でレシチンが形成する逆紐状ミセル溶液に種々のアゾベンゼン誘導体を添加した系を用いて、有機溶媒中での可逆的な光粘性制御について検討した。その結果、不飽和結合を有するレシチンが形成する逆紐状ミセルに対して、疎水性の強いアゾベンゼン誘導体を添加した系について、光照射による粘性変化を高効率で誘起することに成功した。 3) 難水溶性有機化合物の添加による界面活性剤分子吸着膜のモルフォロジー変化 界面活性剤が固/液界面で形成する吸着膜に光応答性物質を可溶化させ、その構造に及ぼす光異性化反応の影響を評価した。その結果、界面活性剤として上述のCTABを用い、光異性化物質として桂皮酸やスピロピラン誘導体を用いた時に、吸着膜の構造がその光化学反応によって、球状、シリンダー状などの間を可逆的に構造変化することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)「アミノ酸系界面活性剤の自己組織化構造に及ぼす光学異性の影響の解析」については、アミノ酸を親水基として有するジェミニ型界面活性剤の希薄系水溶液物性について系統的な検討を行うことができた。また、アミノ酸を親水基とするモノメリック型両親媒性分子を用いた固体微粒子の表面改質ならびに分散性向上についても検討を行った。 2)「アゾベンゼン修飾界面活性剤を用いた光粘性制御系における会合体構造変化機構の解析」については、油剤中で形成する高粘性の逆紐状ミセルに対して、各種のアゾベンゼン誘導体を添加し、そのtrans/cis光異性化反応を行うことにより、有機溶媒中での粘性の可逆的光制御に始めて成功した。 3)「難水溶性有機化合物の添加による界面活性剤分子吸着膜のモルフォロジー変化」については、固/液界面に形成された界面活性剤吸着膜への光応答性難化合物の可溶化現象について原子間力顕微鏡や水晶振動子マイクロバランス法による詳細な検討を行い、さらに可溶化挙動に及ぼす光照射の影響についても知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで二年間で検討を行ってきた「界面活性分子の立体配座・配位や異なる界面活性分子の微小量添加が、系全体の自己組織化構造に大きな影響を及ぼす3つの系」について、従来の臨界充填因子(cpp)から脱却した、自己組織化構造を決定する因子を明らかにする。最終的に、それらの中から得られる共通原理を抽出し、他の系にも適用可能な新たな「自己組織化構造決定因子」を提案することを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度研究費については、これまで同様研究分担者2名と分担で使用していく予定である。支出区分としては、界面活性剤、溶媒などの試薬、測定セルなどの消耗品費を中心に使用していく予定である。特に、最終年度は、研究のとりまとめならびに成果公表を勢力的に行っていく必要があるので、研究者間の密接な議論により、研究の進め方同様、予算の使用法についても最適化を図り、適正かつ有効に使用していきたい。
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Research Products
(10 results)