2011 Fiscal Year Research-status Report
超臨界二酸化炭素を反応場とする高選択的金属ナノ粒子触媒反応の開拓
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23550218
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
仲程 司 近畿大学, 理工学部, 講師 (10375371)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 超臨界二酸化炭素 / 金属ナノ粒子 / 触媒 / キラリティー / フッ化アルキル基 / BINAP |
Research Abstract |
本年度の研究においては、超臨界二酸化炭素中で効果的に触媒能を発現する触媒合成に主眼を置き、実験を行った。まず、光学活性な BINAP の4,4' 位に含フッ素置換基を導入した(S)-4,4’-C6F13-BINAPの合成を行った。その後、これを保護基とするキラル有機分子保護パラジウムナノ粒子((S)-4,4’-C6F13-BINAP-Pd NCs) を合成した。合成した(S)-4,4’-C6F13-BINAP-Pd NCsは、茶褐色の固体粉末であり、ジクロロメタンに分散させると茶褐色の溶液となった。これにより、有機溶媒に対しても親和性と再分散性を示すナノ粒子であることが確認できた。また、(S)-4,4’-C6F13-BINAP NCsの透過型電子顕微鏡観察を行ったところ、その平均粒子径が1.2 ± 0.2 nmであり、非常に小さく、粒子径の整った粒子であることを確認した。また、凝集した粒子がほとんど見られなかったことから、分散性に優れた粒子であることも確認できた。さらに、EDXスペクトルの測定から、C、P、Pdの各元素の存在が確認でき、これにより、得られたPdナノ粒子が、確かに(S)-4,4’-C6F13-BINAPを保護基としたPdナノ粒子であることが確かめられた。さらに、その熱重量分析の結果から、粒子全体に占める有機保護基の割合は87%であることも確認した。溶液の円偏光二色性 (CD) スペクトル測定結果から、金属ナノ粒子特有のコットン効果も確認できた。これにより、(S)-4,4’-C6F13-BINAP NCsがキラリティーを有していることを確認した。以上の研究成果により、超臨界二酸化炭素と高い親和性を持つとされるフッ化アルキル基を導入した有機溶媒に対しても、高い分散性を示す光学活性なPdナノ粒子の合成手法が確立された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究においては、当初の計画から、超臨界二酸化炭素中で効果的に触媒能を発現する触媒合成に主眼を置き実験を行なうことを目的としていた。本年度の研究成果から、超臨界二酸化炭素と高い親和性を持つとされるフッ化アルキル基を導入した有機溶媒に対しても、高い分散性を示す光学活性なPdナノ粒子の合成手法を確立できたことから、当初の実験計画どおり、研究はおおむね順調に進展していると考えている。また現在、予備的な実験として、得られたPdナノ粒子の超臨界二酸化炭素に対する安定性についても、合わせて検討している。このPdナノ粒子を、超臨界二酸化炭素中 (35 ℃, 8 MPa) に3時間放置し、その後透過型電子顕微鏡を用いて改めて観察したところ、超臨界二酸化炭素中に放置する前の粒子径と比較して、大きな変化が見られなかった。また有機溶媒に対する分散性にも特に変化が見られていないことから、得られたPdナノ粒子が超臨界二酸化炭素中でも安定に存在できることを確認している。さらに、CDスペクトルに関しても、比較検討したところ、金属ナノクラスター特有のコットン効果が失われておらず、スペクトルにも特に変化が見られなかったことから、金属ナノ粒子界面上のキラリティーも安定に保持されていることが確認できている。現在は、BINAPを基本骨格に持たず、複数のフッ化アルキル基を分子内に有する金属ナノ粒子の保護基の合成も手掛けており、その金属ナノ粒子の合成と各種安定性評価に関しての実験にも着手している。さらに、得られたPd粒子を用い、実際に、超臨界二酸化炭素の臨界点近傍で、不斉Suzuki-Miyaura cross coupling 反応を行おうとするところまで研究が進展していることから、「研究の目的」の達成度について、上記のとおり自己点検による評価結果を「おおむね順調に進展している。」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究によって得られたPdナノ粒子を用い、超臨界二酸化炭素に対する親和性(溶解・分散性)の追試験を行う。親和性試験の結果から、必要に応じて溶解補助剤を加えた試験も合わせて行う。その後、超臨界二酸化炭素の臨界点近傍において、既知の原料を用いた不斉 Suzuki-Miyaura cross coupling 反応を行うことを予定している。これにより、超臨界二酸化炭素が有するクラスタリング効果と高い基質拡散効果を合わせて活用した、高エナンチオ選択的反応の発現や、反応速度向上の為の検討を行っていく。また、こうした反応を、一般的には化学変換効率と立体選択的反応性のあまり高くないフラーレン誘導体の合成や、未だ報告例の無い不斉 Stille cross coupling 反応にも応用し、新規ナノ材料の構築や、塩基を必要としない、より汎用性の高い不斉触媒反応場としての可能性を探るべく研究を進めていく。さらにこうした超臨界二酸化炭素中での金属ナノ粒子触媒反応を、通常の有機溶媒中での触媒反応と比較することで、新たな触媒反応場としての超臨界流体の可能性を見出し、有機工業分野の発展に寄与すことを目的に研究を進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
超臨界二酸化炭素に対する親和性(溶解・分散性)の追試験の為、液化炭酸ガス(ボンベ)、金属ナノクラスターの保護基に導入する炭素数の異なる様々なフッ化アルキル化試薬などの有機合成試薬・溶媒類の購入を行う。さらには、触媒能を有する金属ナノ粒子合成の為、各種の貴金属試薬の購入も行う。また、超臨界二酸化炭素中で行うSuzuki-Miyaura cross coupling 反応のため、各種ボロン酸試薬の購入や、フラーレン誘導体の合成の原料となる各種フラーレン試薬の購入も計画している。これらに加え、必要に応じて耐圧容器の追加購入や、撹拌機能を備えた反応温度調整用の恒温槽の購入を計画している。
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Research Products
(3 results)