2012 Fiscal Year Research-status Report
超臨界二酸化炭素を反応場とする高選択的金属ナノ粒子触媒反応の開拓
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23550218
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
仲程 司 近畿大学, 理工学部, 講師 (10375371)
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Keywords | 超臨界二酸化炭 / 金属ナノ粒 / 触媒 / キラル / フッ化アルキル基 / BINAP / 酸化銀 |
Research Abstract |
本年度の研究においては、超臨界二酸化炭素中での不斉触媒反応に主眼を置き実験を行った。まず、光学活性なBINAPを保護基に用いたキラル有機分子保護パラジウムナノ粒子((S)- BINAP-Pd NPs) を用い、4-bromotolueneとphenylboronic acidとの鈴木-宮浦クロスカップリング反応により超臨界二酸化炭素中での(S)-BINAP-Pd NPsの触媒能を調べた。その結果、アセトンを反応溶媒として用いた場合と比較すると、反応収率がともに58%となり、超臨界二酸化炭素中においても通常の有機溶媒を用いた場合と同様な反応の進行が確認できた。さらに、反応添加剤として酸化銀(Ag2O)を加えると、有機溶媒中と比べ超臨界二酸化炭素中における反応のみ収率が向上し、収率が77%まで向上することが確認できた。次に、1-bromo-2-methoxynaphthaleneと1-naphthylboronic acidを用いた不斉鈴木-宮浦クロスカップリング反応により、超臨界二酸化炭素中における(S)-BINAP-Pd NPsの不斉触媒能を検討した。すると反応収率は10%程度にとどまり、不斉触媒反応が効率的には進行しなかった。反応条件を最適化し、反応添加剤として超臨界二酸化炭素との体積比で1~2%程度のエチレングリコールを添加することで収率の向上が確認でき、さらに酸化銀を加えることで、反応収率が最終的に68%まで向上することが確認できた。また、この時の不斉収率は60% eeであり、不斉鈴木-宮浦クロスカップリング反応としては、非常に高い不斉収率を達成することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究においては、当初の計画から、1)キラル有機分子保護パラジウムナノ粒子の超臨界二酸化炭素に対する親和性(溶解・分散性)の追試験及び、必要に応じて溶解補助剤を加えた試験も合わせて行うことを計画していた。また、これらの結果を踏まえ、2)超臨界二酸化炭素中における不斉鈴木-宮浦クロスカップリング反応を行うことも計画していた。本年度の研究においては、キラル有機分子保護パラジウムナノ粒子の超臨界二酸化炭素に対する親和性試験と溶解補助剤の選定に一応の目処がついたこと、また、超臨界二酸化炭素中における不斉鈴木-宮浦クロスカップリング反応において、反応収率とエナンチオ選択性の両面において有機溶媒中で行った反応と遜色ない結果が得られたことから、現在までの達成度について上記のように「おおむね順調に進展している。」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究により、超臨界二酸化炭素中における不斉 Suzuki-Miyaura cross coupling 反応と高エナンチオ選択的な反応が一応達成できた。しかしながら、その収率やエナンチオ選択性の向上に関しては、まだ十分な検討が行えているとは言えず、さらなる反応収率の向上と、より高いエナンチオ選択的な反応が行える可能性が残されている。そこで本年度は、超臨界二酸化炭素反応場における反応温度や反応圧力を変化させ、反応収率やエナンチオ選択性にどのような変化が現れるのかをさらに検討していく予定である。特に、反応基質濃度や、反応の際に加える添加剤などの量比により、超臨界二酸化炭素反応場の臨界圧力・温度はさまざまに変化していくため、臨界点の圧力や温度を探っていくことは非常に難しくまた多大な労力が必要となることが予想される。しかしながら、超臨界二酸化炭素が有するクラスタリング効果は、臨界点近傍において最大の効果を発揮する為、さらなる反応収率の向上と高エナンチオ選択的な反応を達成するためにはその条件の決定が非常に重要である。さらに本年度は、不斉 Suzuki-Miyaura cross coupling 反応だけではなく、未だ報告例の無い不斉 Stille cross coupling 反応への展開や、一般的には化学変換効率と立体選択的反応性のあまり高くないフラーレン誘導体の合成反応への展開も目指し、研究を進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
超臨界二酸化炭素を用いた不斉触媒反応の追試験の為、液化炭酸ガス(ボンベ)、金属ナノクラスターの保護基に導入する炭素数の異なる様々なフッ化アルキル化試薬などの有機合成試薬・溶媒類の購入を行う。さらには、触媒能を有する金属ナノ粒子合成の為、各種の貴金属試薬の購入も行う。また、超臨界二酸化炭素中で行うSuzuki-Miyaura cross coupling 反応のため、各種ボロン酸試薬の購入や、フラーレン誘導体の合成の原料となる各種フラーレン試薬の購入も計画している。これらに加え、必要に応じて耐圧容器の追加購入や、撹拌機能を備えた反応温度調整用の恒温槽の購入を計画している。なお、本年度の受け入れ利息65円のうち未使用分32円に関しては、次年度の交付決定額に組み入れた上で、試薬・物品等の購入に充てる予定である。
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Research Products
(6 results)