2011 Fiscal Year Research-status Report
光二量化反応に基づいた有機化合物の可逆的な相構造制御とその応用に関する研究
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23550221
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
木原 秀元 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 主任研究員 (60282597)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 勝 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 研究グループ長 (40344147)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | アントラセン / 光二量化反応 / 熱逆反応 / 相変化 / アモルファス |
Research Abstract |
本年度は、我々の見出した特定のアントラセン光二量体が室温で固体アモルファス相を発現するメカニズムを解明することを試みた。そのためにまず種々のアントラセン誘導体を系統的に合成した。まず、2-アントラセンカルボン酸、および9-アントラセンカルボン酸を原料とし、エステル結合によりアルキルスペーサーを導入した。さらにアルキルスペーサーの末端にメソゲン基(液晶性基)を導入したものも種々合成した。得られたアントラセンモノマー誘導体を様々な条件下(融解状態、結晶状態)で光二量化させ、得られた光二量体の室温における相状態および構造異性体成分について調べた。その結果、光二量体において2種類以上の構造異性体(head-to-head、head-to-tail、syn、antiなど)が形成していることが、固体アモルファス相発現にとって必要条件であることが分かった。9-アントラセンカルボン酸誘導体モノマーから得られた光二量体や、結晶相において光二量化させた2‐アントラセンカルボン酸誘導体の光二量体は、構造異性体が存在せず、ただ1種類の光二量体しか生成しなかったが、この光二量体は室温および比較的高温でも結晶相を示し、固体アモルファス相は示さなかった。また、固体アモルファス相を示したアントラセン光二量体の熱的挙動を調べたところ、室温より高い温度でガラス転移点を示し、さらに光照射実験を行った温度(約150 °C)付近でも非常に粘度が高いことが分かった。このことから、固体アモルファス相を発現するアントラセン光二量体は、融解時における熱運動性が低いということが分かり、さらにこの熱運動性の低さは末端のメソゲン基に由来することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、我々の見出した特定のアントラセン光二量体が室温で固体アモルファス相を発現するメカニズムを解明することを目標とした。解明する手段として、1)種々のアントラセンモノマーを系統的に合成して、それから得られる光二量体の相状態を調べる、2)光二量体中に含まれる構造異性体を分取して、個々の異性体の性質を調べる、3)選択的に1種類の光二量体を合成する、という方法が考えられた。本年度は全ての方法を試みるまでには至らなかったが、1)の方法を用いて研究を進めることによりある程度固体アモルファス相発現のメカニズムを解明することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、まず昨年度試みることが出来なかったアントラセン光二量体の分取を試み、固体アモルファス相発現のメカニズムをより明確にする。また、元々の計画予定であったアントラセンと反対のアルキル鎖末端に光あるいは電子機能性基などを導入し、機能性材料の開発を試みる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の大部分は有機合成試薬やガラス器具などの消耗品として使用する予定である。また、国内および国外の学会で研究成果を発表するために旅費として使用する。「次年度使用額」は昨年度できなかったアントラセン二量体分取のための分取用カラムを購入するために用いる予定である。
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Research Products
(5 results)