2012 Fiscal Year Research-status Report
光二量化反応に基づいた有機化合物の可逆的な相構造制御とその応用に関する研究
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23550221
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
木原 秀元 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, スマートマテリアルグループ研究グループ長 (60282597)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 勝 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 研究企画室長 (40344147)
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Keywords | アントラセン / 光二量化 / 熱逆反応 / 相変化 / 光パターニング |
Research Abstract |
本年度は、各種アントラセンカルボン酸誘導体の溶融光二量化と熱戻り反応を系統的に調べ、溶融状態のアモルファス相の固定化に関するメカニズムをある程度明らかにした。また、フォトマスクを用いた光パターニングを試みたところ、2-アントラセンカルボン酸誘導体(光照射部位がアモルファス固体相、未照射部位が結晶相)と9-アントラセンカルボン酸誘導体(光照射部位が結晶相、未照射部位がアモルファス固体相)から、それぞれがネガポジの関係になるパターンを作成することが出来た。さらに、このパターンは約200℃に加熱すると消去することができ、再生したサンプルは繰り返し光パターニングに使用できることを明らかにした。これまでの結果をまとめ国際誌に投稿したところ、改訂後にアクセプトされ、掲載されることになった。 アントラセン光二量体の構造異性体をHPLCで分取することに関しては、まず分析用のHPLCにより異性体分離が可能な条件(カラム、溶液の種類など)を明らかにした。次に、直径の大きい分取用のカラムを購入し、分取HPLC用の機器を整えたが、今のところ光二量体の単離には成功していない。この原因としては、異性体間の極性の差が小さいこと、および光二量体の溶媒への溶解性が低いことが考えられる。この課題を解決するために、現在リサイクル分取HPLCに取り組んでいるところである。 アントラセンとそれ以外の機能性官能基を組み合わせて新たな光機能性材料を開発する試みに関しては、有機半導体や有機ELにしばしば応用されているペリレンの導入を試みた。まず、5段階の合成経路からなる目的化合物をデザインした。実際に、合成を行ったところ最終5段階目の反応で収率が極端に低くなり、物性評価するほどの量が得られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アントラセン光二量体のHPLC測定では、分析用で適当な測定条件を見つけられても、それが分取用にもそのまま使えるとは限らなかった。特に、溶離液への溶解度が極端に低いため、もし適切に異性体の分離が行えても、分取には相当な量の溶媒が必要であることが分かった。そこで、溶離液を回収することができるリサイクルHPLCを試みることになり、現在も取り組んでいる。 ペリレン部位をアントラセンに導入する試みに関しては、まず、ペリレンテトラカルボン酸ジイミドの片方のイミドにスペーサーを導入すべく、類似物質の文献をもとに合成を進めた。文献に従い中間生成物の精製をほとんど行わず、次のステップに進んでいたが、結局それが原因で最終生成物の収率が低かったと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、リサイクルHPLCを用いてアントラセン光二量体を構成する異性体の分取を試み、アモルファス固体相発現のメカニズムをより明確にする。引き続き、アントラセンとペリレンを結合させた新規機能性材料の開発を試みる。まずは、最終合成ステップの前に、中間生成物の精製を行う予定である。目的化合物が得られた場合、光相変化特性および蛍光発光特性などを調べる。また、溶液塗布による機能性薄膜の作成を目的とし、光による液晶相‐アモルファス相変化が可能なアントラセン含有ポリマーの合成も試みる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の大部分は有機合成試薬やガラス器具などの消耗品として使用する予定である。また、国内および国際会議で研究成果を発表するために、学会参加登録料および旅費として使用する。
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