2013 Fiscal Year Annual Research Report
光二量化反応に基づいた有機化合物の可逆的な相構造制御とその応用に関する研究
Project/Area Number |
23550221
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
木原 秀元 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 研究グループ長 (60282597)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 勝 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 企画室長 (40344147)
|
Keywords | アントラセン / 光二量化 / 熱逆反応 / 相変化 / 光パターニング / 分子動力学法 |
Research Abstract |
本年度は、まずシアノビフェニル基を有するアントラセン光二量体の構造異性体の分離をリサイクルHPLCで試みた。分析用HPLCによると少なくとも3種類の構造異性体が存在していたが、そのうち1種類を分取することができた。単離された構造異性体は室温で結晶相を示すことがわかった。分取する前のアントラセン光二量体は室温でアモルファス固体相を示すので、構造異性体の混合物であることがアモルファス固体相発現の理由の1つであることが明らかとなった。一方、ヘキシル基を有するアントラセン光二量体も3種類の構造異性体から成るが、こちらは室温で結晶相を示す。したがって、構造異性体の混合物であることはアモルファス固体相発現の必要条件ではあるが、十分条件ではないことが分かっていた。そこで、各種アントラセン光二量体の溶融状態における構造、物性等を分子動力学法を用いた計算シミュレーションにより解析することを試みた。その結果、溶融状態における光二量体の拡散速度が、室温で結晶相を示すものでは速く、アモルファス固体相を示すものでは比較的遅いことが示唆された。これにより、溶融状態で拡散速度が速いアントラセン光二量体は安定な構造に辿り着いて結晶相へ転移することができるが、拡散速度が遅いものは安定な構造に辿り着く前にガラス化するということで矛盾なく実験事実を説明することができた。 一方、新たな電子・光機能性材料の開発を目的とし、ペリレン含有アントラセンを合成した。本化合物はペリレン骨格に基づく蛍光を発光し、溶融状態からの冷却時にスメクチック液晶相を発現した。しかし、アントラセン部位が吸収する紫外光を照射したところ、二量化反応は進行しなかった。これは、ペリレン部位が紫外光を吸収してアントラセン部位が励起されないか、あるいは励起されたアントラセンからペリレン部位にエネルギー移動を起こしているためと考えられる。
|
Research Products
(6 results)