2012 Fiscal Year Research-status Report
揮発性元素を含む金属シリサイドの低温合成と熱電特性評価
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23550222
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山田 高広 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (10358260)
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Keywords | 熱電材料 / スズ化物 / 鉛化物 / シリコン多孔体 |
Research Abstract |
本研究課題は,揮発性元素を含むシリサイドおよび他の14族の金属間化合物の合成を試み,それらの結晶構造と特性を明らかにすることが目的である.本年度は揮発性元素としてZnを含むシリサイドの合成を目指し,M-Zn-Si系 (M = Mg, Cr, Mn, Fe, Co)で合成を試みたが,Znを含むシリサイドは合成されなかった. 初年度に,揮発性元素であるNaとMgを含んだ新規化合物Na2MgSnを合成することができたことから,本年度は,同系のスズ化物や鉛化物の合成を目指し,Na-Mg-X (X=Sn, Pb)系での物質探索を行なった.その結果,Na2MgPbおよびNa2Mg3X2 (X=Sn, Pb)の3つの新規スズ化物および鉛化物を合成することに成功し,それぞれについて,結晶構造の解析および電気的特性の評価を行なった.Na2MgPbの結晶構造は,Na2MgSnと同じLi2CuAs型構造,Na2Mg3X2 (X=Sn, Pb)の結晶構造は, MgおよびNaがSn/Pb原子で構成される歪んだ四面体内が稜を共有しながら3次元的につながったMg5Ga2型構造であることが明らかになった.いずれの化合物も電気的特性は金属的で,Na2Mg3Sn2が最も高いゼーベック係数(+70 μVK-1, 500 K)を示した.Na2Mg3Sn2のパワーファクターの最大値は1.1×10-3 Wm-1K-2(500 K)で,比較的高い値を示した. 揮発性元素であるMgを含んだシリサイドとして,Mg2Siの研究を進める過程で,その粉末を温度勾配のある容器内で,873 K, 500 Paで40 h加熱することで,固相のMg2Si粒子からMgが蒸気として脱離し,原料のMg2Si粒子の形状を保持した多孔質のSi粒子が生成することを見出した.この合成手法は多孔質Si粉末の簡便な合成法として期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は,合成の対象をシリサイドからスズ化物,鉛化物に広げることで,3つの新規化合物 Na2MgPbおよびNa2Mg3X2 (X=Sn, Pb) を合成し,それらの結晶構造と電気的特性を明らかにすることができた.Na2Mg3Sn2は,去年度に見出したNa2MgSnと同様,比較的高い熱電特性を有していたため,今後,それらの特性の改善が期待される. 加熱温度と温度勾配,加熱雰囲気を制御することで,Mg2Si粉末から揮発元素であるMgを蒸発させ,多孔質Siの粉末を合成することができた成果は,多孔質Si粉末の新しい合成法を提案できただけでなく,化合物から,それを構成する揮発性元素のみを取り除くという,新たな視点での研究に展開できる可能性を示せたと考えている.以上のことから,本研究課題は当初の計画以上に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,本年度の成功例に習い,合成の対象をシリサイド,およびSiと同族元素のGe, Sn, Pbを含むゲルマナイド,スズ化物,鉛化物に広げ,揮発性元素NaおよびMgを含んだ新規の金属間化合物の合成を目指して研究を進める.これまでに見出した新規化合物で比較的高い熱電特性を示したNa2MgSnやNa2Mg3Sn2に関しては,バルク体の緻密化や元素置換等を行ない,それらの特性の向上を目指した研究を進める.これらの化合物は大気中では不安定であるため,それらの電気・熱的特性を評価するための不活性雰囲気中での測定系の充実を図る.材料への応用の観点からは,大気中で安定な化合物が望まれる.よって,大気中での安定性が高いと期待されるような化合物,具体的には化合物中のNaなどの活性金属元素の組成比が少なく,また活性金属元素を包摂するような結晶構造を有するクラスレート化合物の合成も試み,結晶構造や熱・電気的特性の評価を行なう.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は金属原料,加熱容器,ルツボ,高純度不活性ガスなどの合成に必要な具材と,不活性雰囲気下の各種測定に必要な物品および消耗品の購入に使用する.研究成果を発表するための国内および国際会議への旅費としても使用させて頂く. 次年度使用額は,今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり,平成25年度請求額とあわせ,平成25年度の研究遂行に使用する予定である.
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