2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23550224
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
伴 隆幸 岐阜大学, 工学部, 准教授 (70273125)
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Keywords | 多孔体 / ゼオライト / 溶液化学 / 材料合成 / 結晶成長 |
Research Abstract |
ゼオライトは分子サイズの細孔をもったアルミノケイ酸塩結晶であり,その用途は,細孔を利用したものがほとんどである。本研究では,細孔を有効に利用するための結晶形態の制御を,有機配位子などの有機成分の働きを利用して検討する。平成24年度は,シリカライト-1の大きな単結晶の合成と,L型ゼオライトの薄い配向薄膜の作製を検討した。 シリカライト-1の大きな単結晶の合成に関して,まず単結晶が得られる条件を検討した。シリカライト-1は,いくつかの結晶がくっつきあって成長するインターグロースと呼ばれる結晶成長をしやすいが,原料のシリカゲルの重合度を制御することで,インターグロースを抑制でき,単結晶が合成できることを明らかにした。次に,反応ゲルの組成を変化させて,その単結晶を大きくした。その結果,pHを小さくすると長さ方向に優先的に,ゼオライトの鋳型となるテンプレート剤の濃度を低くすると等方的に結晶が大きくなることが分かった。また,ケイ酸イオンに配位する有機物を反応ゲルに添加すると,結晶は長さ方向に優先的にさらに大きくなった。本研究では長さが約150μmの大きな単結晶が合成できた。 L型ゼオライトの薄い配向膜の作製では,細孔に垂直な大きな面をもつ板状結晶を基板に配向塗布して,その結晶を面内方向に優先的に成長させることで膜化することを試みた。L型ゼオライトは,細孔方向に伸びた柱状形態をとりやすいが,有機配位子の働きを利用して,細孔に垂直な方向へ優先的に成長する条件を昨年度までに見出している。それをもとに厚さ約0.2μmの非常に薄い板状結晶が合成できた。また,それらを単層で配向塗布することにも成功した。さらに,その配向塗布した種結晶を成長させて膜化することを試みたが,膜化中に種結晶が基板からはがれてしまった。薄い配向薄膜の作製には,種結晶の基板への付着力の改善が必要と分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に予定していたL型ゼオライトの非常に薄い配向膜の作製はできなかったものの,ゼオライト結晶と基板の付着力さえ改善すれば,その作製が可能であることが分かった。具体的には,それぞれの反応成分が結晶成長にどのように影響するかを明らかにしたことで,結晶と基板の強い結合力以外の要素である,非常に薄いゼオライト結晶を合成することや,柱状形態の種結晶でさえも太さ方向へ優先的成長させることに成功した。また,反応成分の結晶成長に対する影響から,L型ゼオライトの結晶化機構に対する基礎的な知見を得ることができた。その結果は,その他のアルミノケイ酸塩ゼオライトの結晶化機構の理解にもつながる可能性がある興味深いものである。 シリカ組成のゼオライトの結晶形態制御については,平成24年度はシリカライト-1とβ-ゼオライトについて検討する予定であったものの,シリカライト-1についての検討にとどまった。しかし,シリカライト-1の結晶化でしばしば問題となるインターグロースを抑制する方法を見出すなど,その結晶化についての有用な知見が得られた。その結果をもとに,予定していなかった大きなシリカライト-1単結晶の合成について検討し,それに成功した。 以上のように,予定していた内容で達成できなかった部分はあるものの,得られた結果を,予定になかった興味深い研究成果にもつなげることができた。よって,おおむね順調な進展と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
大きな単結晶の合成や薄い配向膜の作製で興味深い知見が得られているので,ゼオライトの種類をやみくもに増やすのではなく,巨大ゼオライト結晶の合成や非常に薄い配向膜の作製の検討をさらに進めて,これまで得られている知見をそれらの新規な合成法へと発展させる。 大きな単結晶の合成では,これまでは,一般的に用いられる合成条件で結晶化機構を調べてきたが,そこで得られた知見をもとに,有機配位子が巨大結晶の合成に対して有効に作用すると考えられる新たな条件での合成を検討して,ゼオライト巨大結晶の合成の新規合成法につなげる。 非常に薄い配向膜の作製では,ゼオライト結晶と基板の結合力を高めことができれば合成できるところまで来ているので,結晶と基板の結合力を高める新しい方法を検討する。これまでに報告されている方法は,ゼオライト結晶の表面も化学修飾する方法であるため,膜化のためのゼオライト結晶成長に悪影響する可能性が高い。そこで,基板表面のみを有機成分で修飾する新しい方法を検討することにより,ゼオライト結晶と基板の結合力を高める新しい方法を用いた,非常に薄いゼオライト配向膜の新規作製法につなげる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
高価な合成試薬を用いるβゼオライトの合成などを行わなかったため残余金が生じた。 翌年度は,材料合成とそのキャラクタリゼーションをより迅速に行えるようにするため,合成試薬,反応容器,機器分析用消耗品などの消耗品に多くの経費をさく。特に,巨大ゼオライト結晶の合成においては長い合成時間が必要であるため,反応容器を多く買いたして,同時に多くの試料を合成できるようにする。また,非常に薄いゼオライト配向膜の作製では,基板表面の改質のために,予定していなかった高価な試薬を購入する予定である。
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Research Products
(3 results)