2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23550225
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
塩野 剛司 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (30178850)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 泰則 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (50101259)
塩見 治久 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (60215952)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | バイオキャストセラミックス / 木質組織 / 炭素 |
Research Abstract |
本研究課題を遂行するために、平成23年度は、(1)バイオキャストセラミックスの合成に適した組織を持つ木質材料の探索、(2)炭化された木質材料の微細組織を活かしたケイ素化反応の確立を中心に、研究を進めた。 木質材料の探査については、溶融シリコンとの反応性を考慮し、できるだけ多孔質の組織を持つ木質材料を選び、炭化実験を行った。試料として、ラワン材およびバルサ材を選択した。これらの材料を、昇温速度5℃/min~20℃/minと変化させ、800℃で炭化処理した。炭化後のラワン、バルサをSEM観察した結果、多孔性のラワンでも、昇温速度10℃/min、20℃/minの速い域において、道管の周囲などで多くの繊維部分の破損が起こっている様子がみられた。一方、さらに多孔性であるバルサは、昇温速度を5℃/min、10℃/min、20℃/min、と変化させても、繊維部分の破損は認められず、昇温速度の違いによる組織への影響はないと判断できた。本研究では昇温速度10℃/minで作製した木炭をSiC化の実験を行った。 炭化した試料を5×5×15mmの大きさに加工し、アルミナボートにのせSi粉末が試料を覆うようにかぶせ、還元雰囲気電気炉にてAr雰囲気中1450℃で2時間保持の条件で反応焼結させ、木質組織を生かしたSiC焼結体の作製を試みた。得られた焼結体から長手方向の任意の部分を切り出し、X線回折分析を行い、SiCの生成を確認した。その結果、バルサ、ラワン共にSiCの生成が認められた。溶融Siの浸透しにくい組織であると考えられるラワンにおいては内部で未反応のSiのピークが観察された。一方バルサにおいてはラワンのように、Siのピークが見られないことより、浸透した溶融Siは全て炭素と反応しSiCを生成したものと考えられる。また、得られた焼結体をもともとの木質組織を保持していることも明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ予定通り研究が進行していると判断している。現在のところ特に問題はない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の研究成果に基づいて、平成24年度は、最適化された条件で合成されたバイオキャストセラミックスの基礎的物性評価および機械的性質の評価を行なう。多孔質体としての基本的物性の評価として、水銀圧入法による細孔径分布およびBET法による比表面積の評価を行う。さらにケイ素化反応前の炭化木材に対しても、あらかじめこれらの物性を測定しておき、反応後の結果と比較、検討する。 機械的特性評価は圧縮強度および破壊靱性測定を中心に行うと共に、組織と機械的性質との関係を検討し、木質材料の持つ組織がセラミックス化されたときの機械的性質にどのような影響を与えているかを検討し、今後の材料設計の指針としたい。さらに、木質由来の炭素だけでなく、ほかの炭素材料について、同様の実験を行い、木質材料由来の炭素材との比較を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の実験は、種々の木質材料に対する炭化条件の最適化、および炭化された木質材のケイ化反応の可能性を明らかにするという大きく二つの課題があった。炭化条件の最適化に多くの時間を要し、ケイ化反応に対しては定性的にケイ化反応の可能性を明らかにできたが、定性的な評価にまで至っていない。そのためケイ化反応のための電気炉温度を精密に制御する温度調整器などが未購入になり、繰越金が生じた。 平成24年度は、早急にケイ化反応のための電気炉を新たに作製し、繰越金を経費として消化する。平成24年度に請求した経費は、試料作製のための原料試薬、反応焼結を行うための電気炉の消耗品(発熱体、アルミナ管、耐火物)および試料加工のためのダイヤモンド工具などに使用する。
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