2011 Fiscal Year Research-status Report
バナジン酸塩ガラスの新規二次電池正極材料としての開発
Project/Area Number |
23550229
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
久冨木 志郎 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (90321489)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | バナジン酸塩ガラス / メスバウアー分光法 / 国際研究者交流 / ハンガリー / クロアチア / エジプト |
Research Abstract |
本研究課題では二次電池正極材料として応用できる高い導電率と充放電特性を有するバナジン酸塩ガラスの化学組成と熱処理条件の特定に挑戦する。目的達成のためにFeメスバウアー分光法をはじめとする放射化学的な手法を用いて、これまでに構造の決定が困難であった導電性バナジン酸塩ガラスの構造と電気物性の相関を解明する。最終的には従来の二次電池の電池容量の最大値である250 Wh/kgを超える非晶質系の導電性ガラスを開発することをゴールとしている。 平成23年度はBaO-V2O5-Fe2O3(BVF)系Li2O-P2O5-V2O5-Fe2O3(LPVF)系の周辺組成について高い電気物性を持つ組成及び熱処理条件を探索した。その結果、20BaO-70V2O5-10Fe2O3ガラスを500℃で100分熱処理することが最も高い電気伝導度を持つ条件であることが明らかになった。さらに熱処理による構造変化の過程において、原料として5価の状態で加えたバナジウムイオンが、熱処理したガラス中ではその一部が4価になることがXANES測定等で明らかになった。4価と5価のバランスを取ることで電子ホッピングが起こる確率が増加し、その結果導電率が上昇することが示唆された。さらに平成24年度より実施予定であった、基本組成に遷移金属酸化物を加えた新しいバナジン酸塩ガラスの電気物性評価と構造解析に当初の予定より早く着手した。現在マンガンをはじめとするいくつかの遷移金属酸化物をバナジウムイオンと置換したガラスを作成し、電気物性と構造の相関を調査している。これまでに飛躍的に導電性を上昇させる元素は見つかっていないが、化学的耐久性などの物性を向上させる化学組成や構造に関する知見が得られている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高い電気伝導度を有するバナジン酸塩ガラスの組成および熱処理条件の特定はできた。それに加えてさらに高い導電性を有する新組成のガラス開発に当初予定よりは早い段階で着手している。以上のことから研究はおおむね順調に進展しているもの判断できる。電池作成がうまくいかないところから充放電特性の評価が遅れているが、充放電測定に必要な装置は既に整えてあるので、平成24年度はこの遅れを取り戻し、電気伝導度、充放電特性、構造解析がセットになった形でガラスの評価ができるように取り組む。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、前年度に一部前倒しで計画を実施した、さらに高い電気伝導度を持つガラス組成の開発に向けて、基本組成のバナジン酸塩ガラスに、各種金属元素酸化物を導入したガラスを作成し電気物性評価と構造解析の相関研究を行う。さらに、これまでの実験計画の一部を修正し、新しい取り組みとして光蓄電性を視野に入れたガラス組成の開発および電気物性評価を行う。具体的には基本組成であるBaO-V2O5-Fe2O3系のガラスの一部をAgイオンなどと置換したガラスを作成し、熱処理前後の試料について光照射をした際の導電性の変化を調査する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は100万円の直接費を計上している。内訳としてガラス作成に必要な物品(化学試薬、るつぼなど)等の購入費用を60万円程度、研究成果報告のための国内外学会への参加旅費を40万円程度と見積もった。光蓄電性の評価用に光照射装置(20万円程度)を新規に購入するがそれで不足が発生した場合には久冨木所属先の大学固有の研究室毎に配分される研究費を充当する予定である。
|