2012 Fiscal Year Research-status Report
バナジン酸塩ガラスの新規二次電池正極材料としての開発
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23550229
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
久冨木 志郎 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (90321489)
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Keywords | 国際研究者交流 / ハンガリー / クロアチア / エジプト |
Research Abstract |
平成24年度は従前の研究で熱処理後に高い電気伝導性を有することが分かっている20BaO・70V2O5・10Fe2O3ガラスを修飾したガラスについて高い導電性を有する組成の探索を行った。前年度はマンガンで置換した系について検討したが、今年度はタングステン置換系およびスズ置換系について検討した。 まず、20BaO・xWO3・(70-x)V2O5・10Fe2O3 (x=0-50 mol%)ガラスでは、20mol%程度まで置換したガラス試料についても熱処理による導電率の上昇が観測された。さらに、このガラスについては化学的耐久性の向上が確認された。これまでのバナジン酸塩ガラスは熱処理によって導電性の向上は見られるものの酸に浸漬すると容易に溶解してしまう難点があった。タングステン置換を行ったバナジン酸塩ガラスでは導電性を維持したまま化学的耐久性も向上できたことから、導電性素材として応用の幅が広まるものと考えられる。 次にスズ置換系では15Li2O・10Fe2O3・xSnO2・(70-x)V2O5・5P2O5 (x=0-20 mol%)について検討した。導電性に寄与しているバナジウムの量を50mol%まで減らしても、熱処理で導電率の上昇がみられることが分かった。さらに、このガラスを正極材として用い、負極材として金属リチウムを用いたリチウムイオン二次電池を作成、1.0~4.5 Vの電圧範囲、8.3 mA/gの条件で充放電特性評価試験を行った結果、初回充電容量492.6 mAh/gを達成した。サイクル特性評価において8回まで繰り返し充放電特性測定を行った結果、放電で約460 mAh/g, 充電で約480 mAh/g の高い値が得られた。これまでのバナジン酸塩ガラスの電気容量は50 mAh/gであったことから、スズイオンを加えることによって飛躍的に充放電特性が向上することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究の目的は250 Wh/kgを超えるバナジン酸塩ガラスの開発であった。バナジウムイオン濃度を低くしても高い導電性や化学的耐久性を有するガラス組成の開発に成功したことに加えて高い充放電特性を有するバナジン酸塩ガラスの化学組成の一つを特定できたことは、目標の達成に大きく近づいたものと判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、平成24年度の研究成果を学会発表、論文発表の形で公表していくとともに、さらに高い充放電特性を有するバナジン酸塩ガラスの開発に注力する。具体的には平成24年度の取り組みで高い充放電特性を示したスズ置換のバナジン酸塩ガラスに熱処理を施した試料について充放電特性評価を試みたい。スズ置換系のバナジン酸塩ガラスは熱処理を施すとガラスの状態よりも高い導電率を有するため、充放電特性のさらなる向上が期待できる。また、この研究テーマと同時に銀をドープしたバナジン酸塩ガラスについて、光起電力の評価も新たに行い、光照射により起電力を発生できるバナジン酸塩ガラスの組成や処理条件も開発したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は本課題の最終年度に該当する。平成24年度までの研究成果を報告するためいくつかの国際学会への参加を予定している。国際学会参加および登録のための旅費30万円程度を本課題の旅費で賄う予定である。その他、バナジン酸塩ガラス作成に必要な消耗品である化学試薬の購入費を20万円程度、白金坩堝などガラス作成および物性測定に必要な器具の購入費を20万円程度計上する予定である。
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