2011 Fiscal Year Research-status Report
1塩基認識を増幅する高分子型人工核酸の設計と生化学的機能評価
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23550243
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
櫻井 敏彦 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10332868)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ペプチド核酸 / 遺伝子発現制御 / 細胞内輸送挙動 |
Research Abstract |
1塩基認識能を増幅する高分子型人工核酸の設計・特性評価と,これを用いたin vitroでの遺伝子発現制御について検討する。ペプチド核酸(PNA)はDNA/RNAと高い相同性を示すだけではなく,生体内分解耐性に優れるなど人工核酸モデルとして期待される一方で,ゲノム配列認識が必要な16塩基程度では水溶性の低下や融解温度の上昇など通常の生態環境での展開が困難とされている。本研究では,これらの問題点を解決した1塩基認識能を増幅する高分子型人工核酸モデルとしてPNA-PEGコンジュゲートの有用性を提示し,アンチジーン,アンチセンスとしての応用展開を念頭においた遺伝子発現制御の可能性について検討する。機能性PNAの設計は,2本鎖DNAへのインベージョンと高分子化に伴う疎水性を低減させた分子設計,擬似的な長鎖核酸モデルに主眼をおき,PEGを介在したinchworm型コンジュゲートによる効果的な1塩基認識能を検討する。本年度はPNA-PEGコンジュゲートの設計および調製と,in vitroにおける遺伝子発現を検討するための発現プラスミドの調製を行った。機能性PNA-PEGコンジュゲートの調製:機能性PNA-PEGコンジュゲートは、固相合成法により調製した。合成したPNA化合物は、HPLCで精製した後、TOF/MSによる分子量測定並びに再度HPLC による純度測定を行った。また、あわせて細胞内輸送を検討するために片末端に蛍光官能基(SRB)を有するPNA-PEGコンジュゲートも合成した。また,細胞内輸送挙動を明確にするためのPNA-PEGコンジュゲートの調製を目的として,分子鎖末端にローダミンを有するPNA-PEGコンジュゲートも合成した。タンパク質発現プラスミドの構築:無細胞蛋白質合成システムに最適化されたルシフェラーゼ発現プラスミドを調製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
機能性PNA-PEGコンジュゲートは、固相合成法により調製した。合成には1-メチル-2-ピロリドンを溶媒としてPEG試薬(O-(N-Fmoc-2-aminoethyl)-O'-(2-carboxyethyl)- undecaethyleneglycol)を用い、TFAを含むアセトニトリルを移動相としたHPLCで分取精製した。合成した多様なPNA-PEGコンジュゲートの総数は12種に及ぶ。合成したPNA化合物は、HPLCで精製した後、TOF/MSによる分子量測定並びに再度HPLC による純度測定を行った。また、あわせて細胞内輸送を検討するために片末端に蛍光官能基(SRB)を有するPNA-PEGコンジュゲートも合成した。ここでは当初予定していたPNA-PEGコンジュゲートをすべて合成できた。また,H24年度に予定している細胞内輸送挙動を明確にするためのPNA-PEGコンジュゲートの調製を目的として,分子鎖末端にローダミンを有するPNA-PEGコンジュゲートの合成も行った。以上の内容により,本項目で設計した機能性PNA-PEGコンジュゲートに付いては多様にわたる目的化合物が合成・分取精製できたことから、当初の目的をすべて実施できた。また、発現プラスミドはLuc+遺伝子をpIVEXプラスミドへ来ゲーションすることにより調製した。この他、GFP発現プラスミドもあわせて作成できたことから、当初の目標以上の発現プラスミドの作成ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進政策は、下記の通りである。次年度:機能性PNA-PEGコンジュゲートの細胞内ターゲティングトランスフェクト 調製した機能性PNA-PEGコンジュゲートの細胞毒性を評価する。評価後、PNA-PEGコンジュゲートの細胞毒性が高い場合は低減する分子設計へと反映させる。また、毒性が低い場合は引き続き細胞内透過挙動について詳細に検討する。細胞内透過挙動について、マーカー共存法・阻害法の両面より評価する。また、核移行性についても合わせて検討する。最終年度:機能性PNA-PEGコンジュゲートによる細胞内遺伝子発現抑制 遺伝子発現抑制のターゲットとなるタンパク質発現系細胞株を樹立する。また、機能性PNA-PEGコンジュゲートによる遺伝子発現抑制効果について検討する。In vitro系ではおよそ90%程度の抑制率を示したことから,細胞内でも同程度の発現抑制率を目指した分子設計を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究方針は"機能性PNA-PEGコンジュゲートの細胞内ターゲティングトランスフェクト"に関する精査が種とした目的となる。このため、研究費は主に細胞培養関連並びに細胞内トランスフェクトに関する試薬関連が主な用途となる。また、顕著な細胞特性を示す場合には、細胞毒性を低減したPNA-PEGコンジュゲートの再設計が必要となる。この際には,今年度と同様、有機合成試薬の使用が考えられる。細胞内トランスフェクトを評価する装置(主に蛍光顕微鏡、共焦点顕微鏡)は既存設備で対応できることから、設備備品の購入は考えていない。研究成果が得られており、これらの研究成果発表ならびに本申請に関連する情報収集を目的として、2回程度の出張旅費を計上する予定(高分子学会討論会:名古屋など)である。
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Research Products
(6 results)