2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23550245
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
戸田 昭彦 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (70201655)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 高分子 / 結晶 / 融解 / キネティクス |
Research Abstract |
本研究では,結晶性高分子材料の耐熱性を決定する結晶融解現象について,その測定・解析手法を確立することを目的としている。特に,近年,高性能化・高機能化が期待されているアイソタクティック・ポリプロピレンの融解温度領域での動的過程(キネティクス)を明らかにする。本年度は,タクティシティ,分子量が制御された試料について,以下の研究成果が得られた。また,国外研究者と共同で高分子結晶融解キネティクスの温度変調法DSCによる定量的解析を行った。1.種々の非標準熱測定法による高速昇温(<20K/s)途中の融解過程の直接観察法を試みた。まず,赤外線撮像装置による試料表面温度測定を行い,融解開始温度,融解ピーク温度を決定した。また,試料内に挿入された極細熱電対による計測で同様の測定を行った。さらに,μTA法,すなわちヘアピン状の極細白金抵抗線プローブを用いた試料表面局所加熱と温度測定を同時に行い,高さ・温度計測により融解開始による試料軟化と熱異常を検出した。これらの手法は融解開始温度の決定に有用であること,ただしピーク温度の定量的な評価には難点があることが明らかになった。2.本年度設置された観察窓付多段温度ジャンプ型加熱装置を用いた光学顕微鏡による等温融解過程の計測を行い,ほぼ瞬間的に試料温度をジャンプさせることができることを活用して,融解→等温結晶化時の結晶化や融解→等温結晶化→等温融解時の結晶融解を光学顕微鏡により直接観察した。等温結晶化については文献値とよく一致することを確認し,等温融解については結晶化により形成された球晶の等温融解過程のその場観察・計測を行った。3.超高速昇温(~10^4K/s)が可能なFlasDSC法,すなわちマイクロチップセンサーを用いた熱測定法により,融解ピーク温度の結晶化温度依存性,昇温速度依存性の定量的な評価を行い,融解キネティクスモデルに基づく解析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的である結晶性高分子材料の結晶融解現象の測定・解析手法の確立に関し,昇温時の再組織化を抑えるために必要不可欠となる高速昇温による熱測定法の可能性を種々の計測法について検討し,温度ジャンプ型加熱装置を用いた光学顕微鏡による直接計測,超高速昇温によるFlasDSC法が有効であることが明らかになり,次年度以降の研究へと進展している状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に得られた結果を基にして,その発展研究を引き続き行う。また次年度は新たに温度勾配下での試料定速移動法が融解過程の研究にも有用であることを実証する。温度勾配により,低温側の結晶・高温側の溶融体の境界面でのみ融解が定常進行する。このとき移動速度が融解速度に相当し,界面位置が融解温度を表すので,融解温度と融解速度の関係が得られる。温度勾配下での定速移動装置および観察装置は現有のものを用いる。さらに,これまで得られた成果の論文としての発表,口頭発表にも重点を置く。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
備品は請求せず,消耗品費,旅費の請求を引き続き行う。
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Research Products
(2 results)