2012 Fiscal Year Research-status Report
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23550245
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
戸田 昭彦 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (70201655)
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Keywords | 高分子 / 結晶 / 融解 / キネティクス |
Research Abstract |
本研究では,結晶性高分子材料の耐熱性を決定する結晶融解現象について,その測定・解析手法を確立することを目的としている。特に,近年,高性能化・高機能化が期待されているアイソタクティック・ポリプロピレンの融解温度領域での動的過程(キネティクス)を明らかにする。本年度は,タクティシティ,分子量が制御された試料について,以下の研究成果が得られた。 初年度に引き続き,超高速昇温(~10,000℃/s)が可能なFlasDSC法,すなわちマイクロチップセンサーを用いた熱測定法の融解キネティクスへの適用が非常に有用であることを実証した。すなわち,従来法 DSC による低速昇温では見られなかったピークが FlashDSC による高速昇温で低温側に出現し,過加熱のために高速昇温でより高温側に移動していることが確認できた。この結果から,従来法で見られた高温側ピークは元々の結晶が昇温時の(融解-再結晶化を含む)再組織化を経た後に融解したものであり,FlashDSC法で見られる低温側のピークが元々の結晶の融解であることが明らかになった。高速昇温により再組織化の効果を抑えることに成功し,結晶化温度で形成されたそのままの結晶の融点を決定することが可能となった。得られた融点と結晶の厚さとの相関を取る(Gibbs-Thomsonプロットを行う)ことで,結晶性高分子材料の真の平衡融点を決定することが可能となる。そのための小角X線散乱を用いたラメラ厚の決定にも取り組んだ。また,ポリエチレン等の他の結晶性高分子における振る舞いについても検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的である結晶性高分子材料の結晶融解現象の測定・解析手法の確立に関し,昇温時の再組織化を抑えるために必要不可欠となる高速昇温による熱測定法について,超高速昇温によるFlasDSC法に注力し,結晶の融点を決定することが可能となった。その成果についても国際会議での発表や海外の学術誌での公開を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に得られた結果を基にして,その発展研究を引き続き行う。ポリエチレン等,アイソタクティック・ポリプロピレン以外の結晶性高分子における振る舞いについても引き続き検討を重ねる。また,最終年度である次年度では,高分子結晶融解過程の標準的な解析法について取りまとめ,成果の発表を重点的に行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
備品は請求せず,消耗品費,旅費の請求を引き続き行う。
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Research Products
(6 results)