2011 Fiscal Year Research-status Report
可視光による光運動機能を有する高分子液晶多層膜の構築
Project/Area Number |
23550247
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
緒方 智成 熊本大学, イノベーション推進機構, 准教授 (90332866)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗原 清二 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (50225265)
桑原 穣 熊本大学, 自然科学研究科, 助教 (60347002)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | フォトメカニクス / 高分子液晶 / アゾベンゼン / 多層膜 / 自己組織化 |
Research Abstract |
光運動性を有する高分子多層膜の可視光応答性および運動性向上を目的に検討を目的としている。当該年度の計画では可視光応答性分子の設計と評価を予定していたが、作製した多層膜の光応答特性の再現性が乏しい課題があり、正確な評価にはこの課題解決が最優先と考え、本年度は多層膜作製精度の向上と運動性の正確な評価を行う事を主眼に検討を行った。再現性の乏しさの原因の一つは、スピンコートにより積層した高分子多層膜を基板より剥離する際の力学的負荷により多層膜中の高分子鎖が延伸されるためと推測し、負荷をかけない剥離方法の検討を行った。その結果、高分子多層膜を構成する水溶性のPVA、極性有機溶媒に溶解するアゾポリマーいずれとも溶解性の異なる低極性ポリマー(ポリメチルペンテンPMPT)を基板と多層膜の間に形成し、PVAとアゾポリマーは侵さずPMPTのみを溶解するシクロヘキサンに浸して除去することで無負荷剥離に成功した。得られた多層膜の液晶性に対する溶媒の影響は無いことを確認している。さらに従来の力学的剥離法では光運動に不要なPVCからなる剥離層が必要であったが、溶媒剥離法では不要となり、純粋な高分子多層膜が得られ、正確な光運動特性の測定が行えるようになった。また、光応答特性の再現性を向上するために、光照射方法を検討した。従来は、UV光源にはUVレーザーを用い、可視光光源には既存の大型キセノンランプをレンズで集光して照射していた。そのため、UV光と可視光の照射位置、照射面積、照射形状のずれおよび光路の斜行等の問題があった。そこで、UVと可視光の光量を十分に有する光源装置を本研究費により導入し光ファイバーを用いて照射する事で、光源を統一することで解決できた。以上の主な成果に加え、可視光応答性アゾモノマーの設計およびその合成を部分的に完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の達成目標は、可視光応答性高分子液晶の合成であったが、実績の概要でも述べたとおり、新たな優先課題が明らかとなったために当初目的の可視光応答性への取り組みが遅れている。しかし、本年度に実施した課題はいずれ表面化するため、本研究の完成には必須である。本来の目的の可視光応答性は設計と合成初期段階に留まっているため、やや遅れている評価と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度は、23年度に予定していた可視光応答性モノマーの合成および評価を中心に行いつつ、当初の予定であるネットワークの固定化を行う。合成するモノマーは既に設計および初段階の合成を終えており、モノマーの完成を目指す。引き続き重合を行い、得られたポリマーの液晶性、光応答性の評価を行う。特に自己組織化による垂直配向性の発現と可視光への応答性を重点的に観察する。良好な結果が得られない場合には、モノマー中の電子吸引基の変更、スペーサー長の調整を行い、良好な物性を求める。光運動性にはアゾ基が膜に対して垂直に配向する必要があるが、新規設計のアゾモノマーで垂直配向性が得られない場合には、同様な性質を示す非光応答性のビフェニル系モノマーと共重合する事で垂直配向性を発現させる。これによりアゾベンゼン含有量は低下するが、アゾベンゼンをトリガーとして垂直配向性は乱れる事で光運動性を示し、かつ透光性が増す事で感度も増加すると考えられる。24年度の当初計画であるアゾポリマーのネットワークの固定の検討も以下の方法で同時に行う。後架橋反応させるためにエポキシ基を側鎖に有するグリシジルメタクリレートを共重合あるいは混合、PVA層に多官能アミンを混合しておき、多層膜を形成して加熱により自己組織的垂直配向を行った後、配向を乱さない程度かつ、エポキシ基の開環架橋が進行する程度の温度に下げてネットワークの固定を行う。ネットワークの固定により、力学的出力と繰返し性の向上を見込んでいるが、液晶性に基づく配向性の阻害の低減を反応性モノマーとの重合比によりコントロールする。以上のように、24年度は可視光応答性モノマーの合成とその評価、ネットワークの固定化の検討を中心に行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度以降の研究費は、合成に必要な試薬類、器具類を主とし、その他に光照射装置の高密度化のためのレンズ、光学フィルター等の物品費、情報収集のための学会参加に用いる。
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Research Products
(2 results)