2012 Fiscal Year Research-status Report
プリンタブルエレクトロニクス用耐熱性高分子の機能化
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23550251
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
山下 俊 東京理科大学, 理工学部, 准教授 (70210416)
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Keywords | ポリイミド / ポリベンズオキサゾール / プリンタブルエレクトロニクス / 熱膨張 / 表面自由エネルギー / 表面レリーフ / 相分離 |
Research Abstract |
プリンタブルエレクトロニクス用機能性基板としてのポリイミドの合成と機能評価を行った。 ポリイミド類似の耐熱性高分子であるポリベンズイミダゾールに種々の添加材を混合し光照射を行ったのち、現像することなく加熱し、表面物性評価を行った。ピレン、フルオレノン等を添加すると、表面レリーフが形成した。ベンゾフェノン、光酸発生剤、光塩基発生剤では発色および表面自由エネルギー変化が起こった。これらの結果はポリイミドの場合とは異なっており、反応メカニズムが異なっている。ポリイミドではイミド化温度の変化が機能発現のカギとなっていたが、ベンズイミダゾール系では構造変化が機能発現のカギとなっていた。 次に、ポリイミドに添加剤を加えることによりシリカなどの無機物を70~80%添加してもしなやかなフィルムを形成できた。従来のポリイミドー無機ハイブリッド材料ではこのような高濃度で無機物を添加することはできず、有用な材料である。このフィルムの熱膨張率は1ppm程度の優れた熱寸法安定性であり、プリンタブルエレクトロニクス基板として有用である。また、この基板を用いることによって光反応による表面接触角変化を大きく増幅することができた。 次いで、ポリイミドに種々の鎖長のオリゴキシエチレン鎖を導入した新しい高分子を合成した。得られたプレポリマーは溶融性があり無機物を低温で混合するのに効果的な特性を示した。また焼成後得られたポリマーは自発的な相分離を形成し、5ナノメートルほどのナノサイズの相分離構造を誘起できることが分かった。これにより無機ゲストの配向制御に有効であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ポリイミドの構造制御による表面濡れ性の光制御等の機能化を行うことが当初の目的であった。 初年度の研究において、物性制御に対する最適構造のポリマーを合成するのに成功し、研究は大きく進展した。次いで、本年度にはポリイミドに無機物をハイブリッド化することによってそれらの機能化を増幅することに成功し、当初の目的を達成した。 さらに、得られたハイブリッド材料は1ppm以下の優れた熱膨張率をもつことなど、プリンタブルエレクトロニクス材料として当初想定した以外の特性をもつことが分かった。また、この材料は表面濡れ性制御の他に、絶縁性、熱伝導性、放熱性などの物性に優れることも評価の過程から明らかになり、プリンタブルエレクトロニクスデバイスを構築する上で臨まれる他の機能も担うことが可能であることを実証した。 今日のエレクトロニクスや光エネルギー変換デバイス用材料など、当初の想定以外の広い分野へ応用可能な材料として様々な展開が可能になったという点で大きな進展があった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で明らかになったように、本研究で開発した材料は耐熱性、放熱性、熱伝導性、寸法安定性に優れ、かつ光照射によって濡れ性、表面トポロジー、極性、発色などの諸物性をパターニングできるという特徴をもつ。 したがって、プリンタブルエレクトロニクス用機能材料としてのみならず、エネルギー変換や、エレクトロニクス、フォトニクス、などの様々な先端デバイスの実用的な応用展開を図る際に重要な基板材料となると期待される。そこで、それらの応用に重要となる諸物性の評価をおこない、構造の最適化を行おこなう。 また、これまでに得られた知見を活用して接着性の光制御や透明性などの新しい機能付加の検討をおこない、最終的に機能パターニング特性の評価などを行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1)材料の透明化の検討 種々の無機添加物存在下で透明性を確保するためにマトリックスポリマーの低屈折率化が重要である。ポリイミドの低屈折率化に関する分子設計は我々の過去の研究で(1)脂肪族基導入による電荷移動の抑制、(2)フッ素化による分極の抑制 (3)ドナー、アクセプター制御による電荷分離の抑制、がある。しかし、実用化の観点(コスト、耐候性)から、かならずしも満足な分子設計ではない。 そこで、ポリイミドをナノ発泡させることにより材料の低屈折率化および透明化を図り、安価かつ効率よく透明化できると期待できる。その条件設定と反応メカニズムの解明を図る。 2)付加機能の開拓 光照射によりトポロジー変化や表面自由エネルギー変化など諸物性を制御できることを明らかにしてきた。これらの機能を積極的に活用した付加機能の開拓をおこなう。すなわち光照射にともなう接着性の制御、界面におけるゲスト分子の配向制御を検討する。 3)これらの成果をまとめ国際会議および国内学会で報告し、成果の敷衍を図る。また、論文にまとめる。
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Research Products
(39 results)