2011 Fiscal Year Research-status Report
イオン性高分子鎖をもつエラストマーによる高速親水化フィルターの創製と溶質透過制御
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23550253
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
渡邉 順司 甲南大学, 理工学部, 准教授 (60323531)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 高分子合成 / エラストマー / 溶質透過 / 表面偏析 / ポリマーコロイド |
Research Abstract |
高分子エラストマーとイオン性の親水性高分子鎖をつなげたブロック共重合体から成形加工された溶質透過膜を創製する。この膜の特徴は、水中に浸漬するとイオン性の親水鎖が自発的に膜表面および膜の内部に偏析し、親水性の空間(ドメイン)を作り出す。この親水性ドメインが膜の内部で連続的につながることにより、溶質の透過経路が構築される。イオン性の親水鎖の分子設計を変えることにより、ドメインに保持される分子と透過できる分子を選り分けることができると期待され、選択的な溶質透過膜として応用できる。本年度は、コレステロールやビニルモノマー、親水性高分子鎖、シリコーンのような種々の分子の水酸基を開始点として、環状モノマーであるトリメチレンカーボネートを有機触媒存在下で開環重合を行った。これを前駆体として、末端の水酸基に原子移動リビングラジカル重合のための化学修飾を行った。この後、種々の親水性モノマーを精密重合し、エラストマーであるポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)とイオン性基を有する親水鎖からなるブロック共重合体を創製した。具体的には、温度応答性を有するN-イソプロピルアクリルアミド(NIPAAm)および2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)を精密重合した。1H-NMRの解析から、PTMC鎖の重合度は50であり、NIPAAmとMPCの重合度が合計50であるブロック共重合体が得られた。この高分子は水中にて自発的に会合し、ポリマーコロイドを形成することも明らかとなった。このような溶液特性を中心に検討を進め、学術論文として1報を報告した。次年度は成形加工条件を最適化することにより、溶質透過膜の創製に展開させる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究目的を達成するためのポリマー合成が当初難航した。前駆体となるポリマーは容易に合成可能であったが、その次の原子移動リビングラジカル重合がポリマーの溶解性の観点で回収が困難になったため、透析にて精製することとなった。進捗状況が遅延したものの、得られたポリマーが当初の予想通り水中でポリマーコロイドを形成したため、研究が加速して計画を達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の検討課題の一つは、本ポリマー材料を用いて分子ふるい効果を有する薄膜形成を行うことである。既存のメッシュフィルターを活用して、その網目に薄膜を形成させることによって拡散距離を短くするとともに、薄膜自体の強度の確保を行う。基盤となるフィルターの網目サイズやフィルターの素材の最適化を行う。併せて、本ポリマー材料のみで薄膜を形成させることにも挑戦する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度はポリマー合成に時間を要したため、当初予定した合成用有機試薬の使用量が当初の見積もりよりも少なくなった。このため次年度に使用する予定の研究費が発生した。ポリマー合成の問題点については解決済みであるため、次年度に請求する研究費と併せて、ポリマー合成及び溶質透過膜の創製のために使用する。
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Research Products
(3 results)