2012 Fiscal Year Research-status Report
イオン性高分子鎖をもつエラストマーによる高速親水化フィルターの創製と溶質透過制御
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23550253
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
渡邉 順司 甲南大学, 理工学部, 教授 (60323531)
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Keywords | 高分子合成 / エラストマー / 溶質透過 / 表面偏析 / ポリマーコロイド |
Research Abstract |
セルロースアセテートやポリスルホンのようなポリマーに溶質透過性の制御が期待できるイオン性エラストマーをブレンドした溶質透過膜を創製する。本年度は、N–ヒドロキシエチルメタクリレート(HEAA)の側鎖に存在する水酸基から環状モノマーであるトリメチレンカーボネート(TMC)を開環重合により導入したマクロモノマーを創製した。構造解析を1H–NMRおよびサイズ排除クロマトグラフィーから行い、目的とするTMCの重合度(10~50)を有していることが明らかとなった。得られたマクロモノマーは、HEAAをコモノマーとしてラジカル共重合を行った。共重合体中のマクロモノマー組成は、1H–NMRから見積もり、1~10 mol%の共重合体が得られた。一方、セルロースアセテートをN,N–ジメチルホルムアミド(DMF)に所定濃度で溶解し、バーコーターを用いて所定の厚みに製膜した。得られた膜は、溶質透過膜としての分子量分画特性を評価するために、蛍光分子で標識された種々の分子量のデキストランを用いて検討した。その結果、分画分子量は50,000付近に存在していることが明らかとなった。また、分画分子量のしきい値は膜の調製時の溶液濃度によって有意な差は認められなかったが、透過-不透過の変化率に影響を与えることがわかった。さらに、膜の表面および断面の微細構造を評価するために走査型電子顕微鏡による観察を行った。その結果、緻密層とスポンジ層からなる非対称構造を有していることが認められた。セルロースアセテートと共重合体はDMFのような非プロトン型の極性溶媒に溶解し、均一にブレンドできる。このブレンド溶液から非対称構造の膜が作製できることも明らかとなった。今後は、ブレンド膜の特性評価を推進する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、溶質透過膜が作製でき、かつ分画分子量の評価に成功した。さらに、基盤となるセルロースアセテート膜にブレンドする共重合体の創製にも成功した。このため、次年度に計画している研究にシームレスに展開可能であり、研究の進捗状況は順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で創製した共重合体の分子認識特性および分子内包特性について検討する。本共重合体は、極性溶媒中で自発的に会合し、コロイドを形成していることがよび検討により明らかになっている。この分子認識および内包特性を利用して溶質透過性を分子量以外のファクターで制御することを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は共重合体合成に必要なマクロモノマーの合成に時間を要したが、最終的に計画通り研究が推進できた。合成スケールを全体的にスケールダウンしたことにより、当初予定した合成用有機試薬の使用量が当初の計画よりも少なくなった。このため次年度に繰り越す研究費が発生した。ブレンド膜の創製とその溶質透過膜の創製を展開し、最終年度の計画を達成させるために次年度の研究費と併せて使用する。
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Research Products
(3 results)