2011 Fiscal Year Research-status Report
時分割圧電力顕微法による強誘電ポリマー薄膜の超高速スイッチングの研究
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23550254
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Research Institution | Kobayasi Institute of Physical Research |
Principal Investigator |
古川 猛夫 (財)小林理学研究所, その他部局等, 主任研究員 (90087411)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
児玉 秀和 (財)小林理学研究所, その他部局等, 研究員 (60373198)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 強誘電ポリマー / フッ化ビニリデン / 分極反転 / スイッチング / 高分子薄膜 / 圧電力顕微鏡 / 分極ドメイン / 核生成成長 |
Research Abstract |
強誘電ポリマーを代表するフッ化ビニリデン系共重合体の超薄膜について,分極反転の素過程及び核生成成長機構による微視的ダイナミクスを明らかにすることを目的とし,高速時分割圧電力顕微鏡(TR-PFM)による分極反転過程の高精度測定を行う.そのためには,スイッチング特性のさらなる高電場高速測定の実現と,TR-PFMのピコ秒電圧パルスによる時分割と高分解能化,高度な高次造制御核薄膜の調整が実験上の課題である.本研究では,フッ化ビニリデン系共重合体について超高電場高速スイッチング過程を超短パルスTR-PFMにより測定し,極限条件における臨界核の生成と反転ドメインの成長に関する知見を通して,強誘電ポリマーにおける鎖状分子の回転を素過程とする分極反転の微視的機構の解明をめざす事を目的とする.本年度では超高電場高速スイッチング測定ならびに高速TR-PFM測定のための基幹システムを,4GHz帯域幅オシロスコープと3.5GHz帯域差動アクティブプローブを中心に構築をした.スイッチング測定およびTR-PFMではサンプルにステップ状電場を印加することを特徴とするが,本研究で用いられるファンクションジェネレータ,水銀リレーならびにリレー駆動用バッファアンプで構成される電源システムにおいて立ち上がり時間を前記システムで評価したところ300psを達成し,かつ低振動の電場が得られたことを確認した.その結果,スイッチング測定において従来より一桁速いスイッチング時間2nsの超高速測定に成功した.またTR-PFMのためのパルスは幅100nsが達成され,さらなる短パルス化を検討している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
超高電場高速スイッチング測定ならびに高速TR-PFM測定のための基幹システムを4GHz帯域幅オシロスコープと3.5GHz帯域差動アクティブプローブを中心に構築することで,立ち上がり時間300psかつ低振動のステップ状電場が形成され,従来より1桁速い2nsのスイッチング測定に成功した.また,TR-PFMのための超短パルスも実現可能のとなった.現在パルス幅は100nsが可能であるが,さらなる短パルス化を検討している.以上のように,本年度はおおむね順調に研究が遂行されたと評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度開発した超高電場高速スイッチング測定システムと超短パルス高精度TR-PFMを用い,各種強誘電ポリマー薄膜について分極反転の素過程に関するデータを集積していく.薄膜試料の高度な構造制御も重要な仕事となり,VDF/TrFE共重合体以外に,四フッ化エチレン(TeFE)との共重合体についても実験を行う.最も古典的なホモポリマーであるPVDFは少なくとも4つの結晶多形をもつことが知られている.その構造制御や薄膜化に成功すれば,機能材料としては最も高いポテンシャルを有効に利用できることになる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究遂行のための消耗品として液体窒素,回路部品,機構部品にあてる.回路部品では超高速パルス発生装置ならびに電荷検出のための回路作成に当てる.機構部品では薄膜作成のための基盤や材料,PFMやSPM用針の購入にあてる.当研究発表として学会発表を進んで行うため学会発表のための旅費を計上した.
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