2012 Fiscal Year Research-status Report
時分割圧電力顕微法による強誘電ポリマー薄膜の超高速スイッチングの研究
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23550254
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Research Institution | Kobayasi Institute of Physical Research |
Principal Investigator |
古川 猛夫 (財)小林理学研究所, その他部局等, 主任研究員 (90087411)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
児玉 秀和 (財)小林理学研究所, その他部局等, 研究員 (60373198)
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Keywords | 強誘電ポリマー / フッ化ビニリデン / 分極反転 / スイッチング / 高分子薄膜 / 圧電力顕微鏡 / 分極ドメイン / 核生成成長 |
Research Abstract |
強誘電ポリマーを代表するフッ化ビニリデン系共重合体の超薄膜について,分極反転の素過程及び核生成成長機構による微視的ダイナミクスを明らかにするために,時分割圧電力顕微鏡(TR-PFM)による分極反転過程の高精度測定を行う.これまで我々は,400MV/m以上の高電場で分極反転の速さの指標となるスイッチング時間が10nsより短くなること,スイッチング時間で電場依存性が指数側からべき乗則への移行がみられることを報告してきた.また,TR-PFMによる直接観測により,分極反転が低分子強誘電体と同様の核生成成長機構により進行することを示すことができた.本研究では,指数側からの離脱が起きる超高電場における超高速分極反転に焦点を絞り,時間領域スイッチング特性のさらなる高精度測定と,TR-PFMによる直接観測により,核生成成長過程の質の変化を特定することを主たる目的にしている.1GV/mに至る超高電場における1nsを越える超高速スイッチング測定は,加熱等による絶縁破壊と検出システムの速度の限界との戦いになる.昨年度では高速測定のための基幹システムとして,4GHz帯域幅オシロスコープと3.5GHz帯域差動アクティブプローブを中心に構築することができた.本年度では,ファンクションジェネレータと水銀リレーの組み合わせにより,立ち上がり時間300psの高速パルスを確認するとともに,キャパシターの併用による単幅パルスの実現を目指した.実験を進めるに当たり,不可欠な難題である超高電場の絶縁破壊に耐える良質な超薄膜の実現である.現在40nmで薄膜効果を最小限に抑えた試料の作成に成功し,超高速スイッチング時間の温度依存性の測定に成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
超高電場 (1GV/m) 超高速 (1ns) スイッチングの測定に伴う具体的な問題点を整理し,遅速化の傾向はあるが,明らかな進展がみられた.高速化の具体的な問題点は,主として浮遊インダクタンスに起因し,従来より厳密な臨界減衰条件の実現を目指した.厚さ40nmの良質な試料の作成条件を見出し,ペルチエ素子上に高陸した試料系について,スイッチング時間の指数側からべき乗則への移行を,-50℃から75℃の広い範囲において確認することができた.温度依存性は核生成成長機構に本質的に重要な情報を提供する.TR-PFMを行う現有するプローブについては再調整が必要なことが判明し.本年度は必要な修理を行った.高速TR-PFMにおける時分割に必要とする数ナノ秒極短パルスの実現については,条件だしを含め現在なお進行中である.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である今年度は,これまでに発展させた個々の構成要素技術を組み合わせ,さらに進行中の超短高電場パルスの実現とプローブ顕微鏡の性能アップを図り,目標とする分極反転を支配する核生成成長過程の微視的機構の解明に向けて努力する.具体的には,核生成確率と成長速度の電場及び温度依存性の分離,さらには超高電場における成長次元の変化に関する情報の獲得を目標としている.情報の多面化のために,これまで中心となっていたVDF/TrFE共重合体以外に,四フッ化エチレン(TeFE)との共重合体についても実験を行う.最も古典的なPVDFホモポリマーは,少なくとも4つの結晶多形をもつ複雑性と薄膜化が困難であるが,機能材料としてはよりポテンシャルを有することから,積極的にチャレンジしたいと考えている.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究遂行のための消耗品として液体窒素,回路部品,機構部品にあてる.回路部品では超高速パルス発生装置ならびに電荷検出のための回路作成に当てる.機構部品では薄膜作成のための基盤や材料,PFMやSPM用針の購入にあてる.当研究発表として学会発表を進んで行うため学会発表のための旅費を計上した.
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