2013 Fiscal Year Annual Research Report
時分割圧電力顕微法による強誘電ポリマー薄膜の超高速スイッチングの研究
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23550254
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Research Institution | Kobayasi Institute of Physical Research |
Principal Investigator |
古川 猛夫 一般財団法人小林理学研究所, その他部局等, 研究員 (90087411)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
児玉 秀和 一般財団法人小林理学研究所, その他部局等, 研究員 (60373198)
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Keywords | 強誘電ポリマー / フッ化ビニリデン / 分極反転 / スイッチング / 高分子薄膜 / 圧電力顕微鏡 / 分極ドメイン / 核生成成長 |
Research Abstract |
強誘電ポリマーを代表するフッ化ビニリデン系共重合体超薄膜について、分極反転の素過程及び核生成成長機構による微視的ダイナミクスを明らかにすることを目的に、高速時分割圧電力顕微鏡(TR-PFM)による分極反転過程の高精度測定を行った。 初めに超高電場におけるスイッチング時間の極限値に関する理解を深めるため、ピコ秒域にせまる高速測定システムと均一超薄膜試料調整の再検討を行った。ファンクションジェネレータと水銀リレーを用いる高速立ち上がりパルスは、試料を含むシステムの最小化により1nsを切ることを、入手した4GHz帯域幅オッシロスコープを用いて確認できた。実際に高速スイッチン時間を制限するのは、高電場における絶縁破壊と、分極反転に伴う誘電加熱による温度上昇であり、厚さ40nmのVDF/TrFE薄膜について800MV/mにおいて測定したスイッチング時間1nsが、実質的な極限値であると結論した。 TR-PFMによる分極反転の直接観測は、棒状微結晶が集積したVDF/TrFE薄膜について、核生成成長過程により進行していることを確認し、核生成確率とドメイン成長速度を分離測定することに成功した。時分割を実現するために利用したパルス幅を徐々に増大させた電圧の重ね合わせに際し、反転核となるサイトはそれぞれに決まった生成時間を持つこと、核生成確率と成長速度は、反転時間と同等の活性化電場を持つことが明らかになった。成長は一次元的であり、速度は例えば電場150MV/mで秒速1cmであった。従来、ステップ電場に対するスイッチング曲線の形状解析から推定してきたいくつかの可能性を、TR-PFMにより特定することができ、分極反転のダイナミクスの定量的理解に大きく貢献することができた。
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