2011 Fiscal Year Research-status Report
スプリット型パルスコイルによる超強力な超伝導バルク磁石の実現と磁気分離への応用
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23560002
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
藤代 博之 岩手大学, 工学部, 教授 (90199315)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内藤 智之 岩手大学, 工学部, 助教 (40311683)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | パルス着磁 / 超電導バルク / 捕捉磁場 / 温度上昇 / パルスコイル / シミュレーション |
Research Abstract |
REBaCuO系超伝導バルク(RE:希土類元素)は、REBa2Cu3O7超伝導相とRE2BaCuO5非超伝導相、Ag, Ptなどからなる複合材料であり、超伝導相のc軸配向結晶化と非超伝導相への磁束の強いピン止めにより、パルス着磁により5 T(テスラ)を超える「超伝導バルク磁石」が実現している。本研究は、これまでの様々な形状を有するパルスコイルを用いた超伝導バルクのパルス着磁に関する研究成果とシミュレーション解析結果を基礎に、スプリット型などの新しいコイルを用いたパルス着磁法を提案し、実証実験により5テスラ級の超強力な疑似永久磁石の実現を目指した。最終的には新しい方法により5連型バルク磁石装置を着磁し、バルク磁石装置を用いた汚染水や汚染土壌などの環境浄化磁気分離の有効性を明らかにする。1)シミュレーション解析によるパルスコイルの最適化とコイル設計、製作 これまでに構築した超伝導バルク内の電磁場・温度の連成シミュレーション解析により、様々な形状のパルスコイルに対して、様々な条件(例えば、初期温度、印加パルス磁場、パルス幅など)によるパルス着磁における超伝導バルク内の磁場と温度の時間変化を計算する。その結果から超伝導バルクを効率よく着磁するパルスコイルの形状の最適化を行った。2)超伝導バルクのパルス着磁実験 既存のパルスコイルを用いて、様々な形状(四角型、円盤形)、材質(REBaCuO, MgB2)の超電導バルクをパルス磁場で着磁した。着磁現象を正確に把握するため、バルクの表面には複数のホール素子と温度計を設置して、磁場及び温度の場所及び時間依存性を測定した。既存の冷却用GM冷凍機を用いてバルクを14~80 Kの範囲で冷却し、既存のパルス電源(容量20~100 mH可変)を用いて印加磁場を最大8 Tまで変化させパルス着磁実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)これまでに構築した超伝導バルク内の電磁場・温度の連成シミュレーション解析により、様々な形状のパルスコイルに対して、様々な条件によるパルス着磁における超伝導バルク内の磁場と温度の時間変化を計算し、捕捉磁場向上のための最適設計を行った。この結果は、4編の学術論文、3件の国際会議、5件の国内学会で発表した。2)既存のパルスコイルを用いて、様々な形状(四角型、円盤形)、材質(REBaCuO, MgB2)の超電導バルクをパルス磁場で着磁した。材料や形状により最適なパルス着磁条件が異なることが明らかになった。特にMgB2バルクのパルス着磁研究は世界で初めて行われ、研究成果を学術論文として投稿した。3)バルク磁石装置を用いた汚染水や汚染土壌などの環境浄化磁気分離の有効性を明らかにする予備実験として、マグネタイト含有の吸着材の開発を開始した。特に原発事故に伴う放射性セシウムを吸着し、改修するシステムの設計もスタートした。
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Strategy for Future Research Activity |
1)実験データの解析、シミュレーションとの比較と考察 スプリットコイルを用いた場合の磁束の運動と温度上昇の実験結果について、シミュレーション結果と比較しながら考察する。これまでのソレノイド型コイルを用いたパルス着磁実験では、実験を行った複数の超伝導バルクはそれぞれ捕捉磁場特性が異なるが、本研究においてはこれらのバルクをスプリット型コイルを用いて着磁実験を行い、バルクの超伝導特性の違いによる捕捉磁場・温度特性をソレノイド型コイルの結果と共に比較、考察する。着磁後、既存の2次元磁場分布測定装置を用いて真空容器表面でホール素子をスキャンし、着磁後の磁場分布を実験的に測定する。その際の寒剤や温度計等の消耗品が必要となる。シミュレーション結果と比較することで磁束の捕捉現象を考察する。バルクの詳細な臨界電流密度分布は、既存の磁場中冷却着磁(FCMによる捕捉磁場分布測定や、既存のマグネトスキャン分布測定装置を用いて評価する。研究成果を国際会議や国内学会で発表するための旅費が必要となる。2)5.2 Tを越える捕捉磁場の実現を目指した着磁実験 超伝導バルクの性能は年々向上している。現在最も特性の良い直径45 mmバルクを購入し、従来型のバルクとの比較実験を行う。さらに、着磁条件の最適化により、本研究グループが達成したPFMによる世界最高の捕捉磁場5.20 Tを更新する着磁を実現する。現在、磁場中冷却着磁(FCM)では10 T級の着磁が比較的容易に実現されている。パルス着磁の捕捉磁場をFCMの着磁レベルに近づける。3)5連型超伝導バルク装置を用いた汚染水および汚染土壌の磁気分離による浄化実験・・・既存の5連型超伝導バルク磁石装置に研究成果を適用し、応用実験に使用する。実験装置を組み立て、実験を行うための消耗品が必要となる。 4月以降に執行が行われるため、H24年度に繰り越しを行った。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1)パルス着磁実験のための消耗品・・・液体窒素、冷凍機のメンテナンス、超電導バルクの購入、ホール素子や抵抗温度計の購入、バルク固定治具等の製作費2)研究成果発表のための旅費・・・ASC2012(アメリカ)における発表、低温工学・超電導学会および応用物理学会での発表3)超伝導バルク装置を用いた汚染水および汚染土壌の磁気分離による浄化実験のための装置開発4)シミュレーションソフトの保守料
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