2012 Fiscal Year Research-status Report
スプリット型パルスコイルによる超強力な超伝導バルク磁石の実現と磁気分離への応用
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23560002
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
藤代 博之 岩手大学, 工学部, 教授 (90199315)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内藤 智之 岩手大学, 工学部, 助教 (40311683)
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Keywords | パルス着磁 / 磁場中冷却着磁 / 超電導バルク / MgB2 / 捕捉磁場 / 温度上昇 / パルスコイル / シミュレーション |
Research Abstract |
REBaCuO系超伝導バルク(RE:希土類元素)は、REBa2Cu3O7超伝導相とRE2BaCuO5非超伝導相、Ag, Ptなどからなる複合材料であり、超伝導相のc軸配向結晶化と非超伝導相への磁束の強いピン止めにより、パルス着磁により5 T(テスラ)を超える「超伝導バルク磁石」が実現している。24年度は、様々な形状や配置のパルスコイルを用いた超伝導バルクのパルス着磁に関するシミュレーション解析結果を基礎に、実証実験により5テスラ級の超強力な疑似永久磁石の実現を目指した。さらに、新しい超伝導バルクとしてMgB2バルクを作製し、パルス着磁や磁場中冷却着磁を用いてMgB2超伝導バルク磁石の可能性を実験とシミュレーションにより明らかにした。最終年度に向けて、バルク磁石装置を用いた汚染水や汚染土壌などの環境浄化磁気分離の有効性を検討した。 1 シミュレーション解析によるパルスコイルの最適化とコイル設計 これまでに構築した超伝導バルク内の電磁場・温度の連成シミュレーション解析により、様々な形状や配置のパルスコイルに対して、様々な条件(例えば、初期温度分布、印加パルス磁場、パルス幅など)によるパルス着磁における超伝導バルク内の磁場と温度の時間変化を計算した。その結果、超伝導バルクを効率よく着磁するパルスコイルの形状の最適化を行った。 2 超伝導バルクの着磁実験 既存のパルスコイルを用いて、様々な形状(四角型、円盤形)、材質(REBaCuO, MgB2)の超伝導バルクをパルス磁場で着磁した。着磁現象を正確に把握するため、バルクの表面には複数のホール素子と温度計を設置して、磁場及び温度の場所及び時間依存性を測定した。また、磁場中冷却着磁を用いて最大捕捉磁場とその温度依存性を評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)これまでに構築した超伝導バルク内の電磁場・温度の連成シミュレーション解析により、様々な形状のパルスコイルに対して、様々な条件によるパルス着磁における超伝導バルク内の磁場と温度の時間変化を計算し、捕捉磁場向上のための最適設計を行った。この結果は2編の学術論文、3編の国内学会で発表した。 2)既存のパルスコイルを用いて、様々な形状(四角型、円盤形)、材質(REBaCuO, MgB2)の超電導バルクをパルス磁場で着磁した。材料や形状により最適なパルス着磁条件が異なることが明らかになった。特にMgB2バルクのパルス着磁研究は世界で初めて行われ、2012年5月、10月の国際会議で発表した。さらに、3編の学術論文、5編の国内学会で発表した。 3)様々な特性を有するREBCOバルクの磁場中冷却着磁を40-90Kの範囲で行った。直径65mmのGdBCOバルクを40Kで着磁し、真空容器表面で5Tの捕捉磁場を実現し、水のモーゼ効果のデモンストレーションを学会等で発表した。 4)バルク磁石装置を用いた有機半導体の液相成長を開始し、モーゼ効果による有機半導体結晶の結晶性や移動度の向上について、系統的な実験を実施した。磁気分離応用に次ぐバルク磁石の有望な応用分野であることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
1)パルス着磁、磁場中冷却着磁の実験データの解析、シミュレーションとの比較と考察 特にMgB2バルクを用いてパルス着磁を行い、磁束の運動と温度上昇の実験結果について、シミュレーション結果と比較しながら考察する。MgB2バルクはHIP法によりこれまでのバルクを上回る特性のバルクが実現しており、パルス着磁において1Tを越える捕捉磁場を目指す。着磁後、既存の2次元磁場分布測定装置を用いて真空容器表面でホール素子をスキャンし、着磁後の磁場分布を測定する。シミュレーション結果と比較することで磁束の捕捉現象を考察する。バルクの詳細な臨界電流密度分布は、既存の磁場中冷却着磁(FCM)、ゼロ磁場冷却着磁(ZFC)による捕捉磁場分布測定や、既存のマグネトスキャン分布測定装置を用いて評価する。 2)5.2 Tを越える捕捉磁場の実現を目指した着磁実験 超伝導バルクの性能(捕捉磁場特性、均一度など)は年々向上している。現在最も特性の良い直径45 mmバルクを入手し、従来型のバルクとの比較実験を行う。さらに、着磁条件の最適化により、本研究グループが達成したPFMによる世界最高の捕捉磁場5.20 Tを更新する着磁を実現する。現在、磁場中冷却着磁(FCM)では10 T級の着磁が比較的容易に実現されている。パルス着磁の捕捉磁場をFCMの着磁レベルに近づける。 3)既存の5連型超伝導バルク磁石装置に研究成果を適用し、以下の3つの応用実験に使用する。(1)モーゼ効果を利用した有機半導体液相成長における結晶性の向上(2)汚染水および汚染土壌の磁気分離による浄化実験として、ヒ素(As)を含む鉄沈殿物の高勾配磁気分離や、農地に含有する放射性セシウム等の有害物質の磁気分離
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「該当なし」
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