2012 Fiscal Year Research-status Report
高圧水中合成金属水素化物微小試料のイオンビーム分析と電子構造分析
Project/Area Number |
23560009
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
曽田 一雄 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70154705)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 政彦 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70222429)
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Keywords | 水素化物分析 / マイクロビーム硬X線光電子分析 / マイクロイオンビーム分析 / 超臨界水中金属水素化物合成 |
Research Abstract |
前年度に新しく開発した試料支持法と直径40μmのマイクロビーム硬X線光電子分光法を用いて、連携研究者の協力の下、軽水および重水を用いた超臨界水中でいくつかの水素化段階に調整した微小Nb水素化物試料について化学状態分析を行った。X線回折法によると、合成試料は金属Nbと侵入型NbHおよびNbH2化合物とから成ると予想されるが、市販のNb酸化物から作製した標準試料と比較した結果、調査したどの試料の試料表面も少なくとも10 nmの深さにわたってNb酸化物(Nb2O5)で覆われていることを確認した。さらに、試料内部に水素化物が形成されていることを明らかにするため、新しく開発された広角電子レンズと直径1~2μmの硬X線マイクロビームを用いて角度分解型硬X線光電子分光を行い、化学状態の深さ分布分析を行った。その結果、深さとともに増加するNb水素化物に起因した成分を見出し、水素化の証拠の一つを得た。 一方、出口径40~100μmのガラスキャピラリと試料位置を調整するマイクロステージを備えたマイクロイオンビーム分析装置(検出器配置によってラザフォード後方散乱(RBS)法、反跳粒子検出(ERD)法、核反応(NRA)法が可能)を作製・調整した。まず、Auメッシュ(#100; 線径30μm、間隔224μm)を用いてRBSスペクトル測定が可能であることを示し、メッシュの線径から測定の空間分解能を評価した。また、超臨界重水中合成した重水素化試料に対してD(3He,p)α核反応を用いた核反応イオンビーム分析を行った。この結果から、測定の問題点を明らかにして試料保持法を改良した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大型放射光施設利用による硬X線光電子分析については、新しく整備された広範囲角度分解型電子レンズと、角度積分型測定より1桁小さい直径約2μmの硬X線マイクロビームを用いて化学状態の深さ分析を行うことができた。これを用いて水素化物に起因するスペクトル成分を明らかにし、水素化の証拠の一つが得られた。角度積分型測定で得た結果は、国際会議等で発表し、学術論文としてまとめた。角度分解型測定の結果の詳細は、現在検討中であるが、次年度開催される国際会議で発表予定である。したがって、硬X線光電子分析による化学状態分析は当初予定どおり成果を得たと自己評価する。 一方、イオンビーム分析による水素濃度測定については、ガラスキャピラリを用いてラザフォード後方散乱スペクトルが測定できることを示し、この測定法の空間分解能を評価できた。しかし、核反応法および反跳粒子検出法による水素濃度測定には未だ至っていない。このように、当初の予定より少し遅れていると考える。 試料については、予定通り、連携研究者の協力により、組成の異なる軽水素化および重水素化試料が準備できた。 これらの成果は、日本放射光学会、日本原子力学会、日本セラミックス協会の国内学会で発表し、国際会議2報と国際学術雑誌論文1編として公表した。したがって、総合的におおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
硬X線光電子分析による化学状態の深さ分析については、詳細な解析を行い、完了する。イオンビーム分析については、キャピラリ集束したイオンビームを用いて核反応法による測定精度の向上と反跳粒子検出法による深さ分析を行い、組成の知見を得る。これらにより、超臨界水中におけるNbの水素化を明示するとともに、マイクロビーム分析技術の有用性を示し、本課題研究を総括する。 これらの成果は、国内学会で発表するとともに国外国際会議(HAXPES 2013)でも発表し、学術論文としてまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
イオンビーム分析に関わる消耗品:30万円 成果発表(国際会議参加料・旅費など):32万円 合計 62万円
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Research Products
(7 results)