2013 Fiscal Year Annual Research Report
酸化度の異なる相転移酸化物結晶の成長と電気伝導特性に関する研究
Project/Area Number |
23560013
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
沖村 邦雄 東海大学, 工学部, 教授 (00194473)
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Keywords | 酸化バナジウム薄膜 / 相転移 / マグネリ相 / 電気的特性 / 結晶変態 |
Research Abstract |
2013年度は2011年度及び2012年度の成果を踏まえて,酸化度の異なるバナジウム酸化膜の中で,V2O3組成及びVO2組成を有する薄膜に特に注目して構造及び電気的特性について詳細に研究を実施した.その結果,反応性スパッタによって低い分圧下で作製したV2O3薄膜は0.0001Ωcm台の低い抵抗率を有するが,酸素中の適切な条件でのポストアニール処理にによって大きく酸化状態が変化し,マグネリ相であるV4O7から化学量論比のVO2が成長することがわかった.更に酸化度のより高いV6O13相の成長条件を見出した.まず,V4O7マグネリ相は低温での相転移特性を有することが知られているがその物性は未解明の部分が多く,その成長条件の確立は非常に重要である.また,VO2は本研究課題の中心材料である.本研究によって,アニールによって作成されたVO2薄膜は直接堆積によって得られたVO2薄膜に比べて電子状態に変化が見られ,酸素欠陥の補償が進み,良好な絶縁体-金属相転移特性を有することが判明した.結晶粒もより大きく成長しており,エピタキシャル成長しないSi基板上においてμmサイズ以上の大きな結晶粒が得られた.これによってSi基板上でVO2薄膜を用いた温度センサーやスイッチング素子の形成が可能になり,VO2薄膜の工学応用にとって大きな進展である.更にV6O13薄膜はその特徴的な結晶構造から,リチウムイオン電池の負電極材料への応用が期待されており,その安定な成長は今後の電池開発へ向けて有益なものとなる.以上のように本研究課題の推進によって,V2O3からV2O5の組成の中で,工学的・理学的な応用価値の高いV2O3,V4O7,VO2,V6O13組成のバナジウム酸化物薄膜の作製条件を明確にできた.この成果は今後の電子素子や電池開発等に貢献する成果である.
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Research Products
(11 results)