2011 Fiscal Year Research-status Report
異方性界面を利用したアジマス配向有機薄膜作成の実用的手法の開発
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23560019
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
奥平 幸司 千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 准教授 (50202023)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 有機デバイス / 膜物性 / 分子配向 |
Research Abstract |
膜表面の特定方向に分子を配向させた面内異方性有機薄膜を作成する手法を開発し,その配向を評価する。本手法では,機械的に特定の方向に傷をつけた基板に,一軸配向したポリテトラフルオロエチレン(PTFE) 膜を作成し,これをベースとして,面内異方性をもつ機能性有機薄膜を作成するものである。本研究の目的は,成膜条件(特に機械的な溝構造)を制御して作成した膜の分子配向を正確に決定し,より高い面内異方性を持つ膜の作成条件,および配向メカニズム(ミクロンサイズの機械的な溝がナノサイズの分子の配向に与える効果)を明らかにすることである。一方方向に傷をつけた銅基板上に作製したPTFE膜の軟X線吸収スペクトル(NEXAFS)を測定した。入射光の電場ベクトルが,傷の方向と平行および直交条件で,NEXAFSの入射角依存性を測定した。これよりPTFE分子は分子軸(C-C軸の方向)を溝方向に向けて,基板に平行に配向している分子が多いことがわかった。傷をつけた銅基板と溝の構造(溝の間隔や形状等)が既知の回折格子を基板とし,PTFE膜をその上に作製し,さらにペンタセンを蒸着した。これらの膜の角度分解紫外光電子スペクトルを測定した。入射光の電場ベクトルが,傷の方向と平行および直交条件でペンタセンのHOMOからの放出光電子の放出角依存性を測定した。その結果,3種類の基板全てにおいて,水平条件と,垂直条件で放出角依存性が異なっており,ペンタセン分子の異方性配向が起こっていることを見出した。その中で,異方性は,傷をつけた銅基板>溝間隔が細かい(800nm)の回折格子>広い(3μm)となった。銅基板上に作成した溝の間隔は最も狭いもので数nmまで広く分布していることから,高い異方性配向を達成するためには,基板上の溝間隔は数100nm以下の狭い溝間隔が必要であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年の研究計画◎高い異方性を持つ一軸配向PTFE膜作成の条件を見出す。傷をつけた銅基板と溝の構造(溝の間隔や形状等)が既知の回折格子を基板とし,PTFE膜をその上に作製し,さらにペンタセンを蒸着した。これらの膜の角度分解紫外光電子スペクトルを測定した。入射光の電場ベクトルが,傷の方向と平行および直交条件でペンタセンのHOMOのからの放出光電子の放出角依存性を測定した。その結果,3種類の基板全てにおいて,水平条件と,垂直条件で放出角依存性が異なっており,ペンタセン分子の異方性配向が起こっていることを見出した。その中で,異方性は,傷をつけた銅基板>溝間隔が細かい(800nm)の回折格子>広い(3μm)となった。銅基板上に作成した溝の間隔は最も狭いもので数nmまで広く分布していることから,高い異方性配向を達成するためには,基板の上の溝間隔は数100nm以下の狭い溝間隔が必要であることがわかった。以上の結果から,高い異方性を持つ一軸配向PTFE膜作成の条件の一部を見出すことができた。しかしながら,配向度の定量的評価ができていないこと。また高い異方性配向を与える溝の間隔の定量的な評価までいたっていない。。◎機械的に傷をつけた基板にPTFEを蒸着することでPTFE分子が,傷をつけた方向にPTFEの主軸(C-C結合の方向)配向するメカニズムを解明する。このために,有機薄膜へのダメージが少ない光電子放射顕微鏡(PEEM)を使うことを計画していた。しかしながら,そのためにはPEEM装置に,有機膜作成チャンバーを装着することが必要となるが,まだ未装着である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) ペンタセン異方性配向膜の異方性の定量的評価傷をつけた銅基板および溝の構造(溝の間隔や形状等)が既知の回折格子を基板とし,PTFE膜をその上に作製し,さらにペンタセンを蒸着した。これらの膜の角度分解紫外光電子スペクトルを測定する。入射光の電場ベクトルが,傷の方向と平行および直交条件でペンタセンのHOMOのからの放出光電子の放出角依存性を,ペンタセン分子の配向分布を考慮に入れた理論計算と比較し,分子の配向分布(配向の異方性)を定量的に決定する。(2)高い異方性配向を与える基板上の溝構造の定量的決定溝間隔が数百nm以下で溝構造が既知の基板上に,PTFE,ペンタセン膜を作製する。その配向度を軟X線吸収スペクトル,角度分解紫外光電子スペクトルの測定する。その結果を解析することで。高い異方性配向をしめす基板表面構造の条件を明らかにする。(3)光電子顕微鏡(PEEM) を用いて,機械的に溝構造をつけた基板にPTFEおよびペンタセンをを蒸着することでそれらの分子が,溝構造によってどのように異方性配向を持つ膜成長をするのかを調べ,配向メカニズムを解明する。PEEM装置に有機膜作製チャンバーを装備する。これにより各蒸着過程によるPEEM像の変化を連続的に測定することが可能となる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
光電子顕微鏡に装着する有機膜作製チャンバーで使用する真空部品(膜厚計,真空計,ポンプ)等を購入する。軟X線吸収スペクトルの測定用試料を作成するため,有機蒸着装置が必要となる。本装置自体はすでに既存であるが,稼働させるために必要な,ポンプ等を購入する試料作成のためには,高純度のペンタセンが必要となる。そのための精製装置を稼働させるために,各種配管,真空部品等が必要とある。溝間隔が数百nm以下で溝構造が既知の基板(回折格子およびリソグラフィを用いて作成された基板)を購入する。
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