2012 Fiscal Year Research-status Report
異方性界面を利用したアジマス配向有機薄膜作成の実用的手法の開発
Project/Area Number |
23560019
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
奥平 幸司 千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 准教授 (50202023)
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Keywords | 有機分子薄膜 / 分子配向 / 面内異方性 |
Research Abstract |
膜表面の特定方向に分子を配向させた面内異方性有機薄膜を作成する手法を開発し,その配向を評価する。本手法では,機械的に特定の方向に傷をつけた基板に,一軸配向したポリテトラフルオロエチレン(PTFE) 膜を作成し,これをベースとして,面内異方性をもつ機能性有機薄膜を作成するものである。本研究の目的は,成膜条件(特に機械的な溝構造)を制御して作成した膜の分子配向を正確に決定し,より高い面内異方性を持つ膜の作成条件,および配向メカニズム(ミクロンサイズの機械的な溝がナノサイズの分子の配向に与える効果)を明らかにすることである。 一方方向に傷をつけた銅基板上に作製したPTFE膜の軟X線吸収スペクトル(NEXAFS)を測定した。入射光の電場ベクトルが,傷の方向と平行および直交条件で,NEXAFSの入射角依存性を測定した。密度汎関数法を利用したPTFEのNEXAFSの解析を行い,かつ分子配向に分布を取り入れた解析を行った。理論計算との比較を行うことにより,PTFE分子の分子鎖と溝方向への配向角は,正規分布(標準偏差=30°)であることを見出した。 さらに,一軸配向したPTFE上に作製したペンタセン膜の角度分解紫外光電子スペクトルを測定し,その結果を理論計算(自己散乱まで取り込んだ光電子強度解析プログラム)と比較した。その結果,ペンタセンの単結晶(バルク層)のa軸が,下地の基板のみぞ方向と一致しているとして,測定値をよく再現することがわかった。 以上のように,異方性分子配向の定量的解析をすすめることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
◎一軸配向したPTFE上に作製したペンタセン膜の角度分解紫外光電子スペクトルを測定し,その結果を理論計算と比較することで,ペンタセンの分子配向の定量的に見積もることができた。しかしながらここでは,単結晶(バルク相)に関して行ったのみであり,より実際の系に近い単結晶(薄膜相)でかつ分子配向の分布も取り入れた系については,まだ未解析である。 ◎機械的に傷をつけた基板にPTFEを蒸着することでPTFE分子が,傷をつけた方向にPTFEの主軸(C-C結合の方向)配向するメカニズムを解明する。 このために,有機薄膜へのダメージが少ない光電子放射顕微鏡(PEEM)を使うことを計画し有機膜作成チャンバーを装着した。しかしながら,PEEM測定で放電等頻発し,測定条件を十分見積もることができず,まだ十分な実験結果が得られていない。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) ペンタセン異方性配向膜の異方性の定量的評価 傷をつけた銅基板および溝の構造(溝の間隔や形状等)が既知の回折格子を基板とし,PTFE膜をその上に作製し,さらにペンタセンを蒸着下系に関して,角度分解紫外光電子スペクトルを測定する。入射光の電場ベクトルが,傷の方向と平行および直交条件でペンタセンのHOMOのからの放出光電子の放出角依存性を,実際の系に近いと考えられる単結晶(薄膜層)について,配向分布を考慮に入れた理論計算と比較し,分子の配向分布(配向の異方性)を定量的に決定する。 (2)高い異方性配向を与える基板上の溝構造の定量的決定 より細かい溝(溝間隔が数百nm以下)を作成したで基板上に,PTFE,ペンタセン膜を作製する。その配向度を軟X線吸収スペクトル,角度分解紫外光電子スペクトルの測定する。より高い面内異方性配向をしめすペンタセン有機薄膜をめざす。 (3)有機膜作製チャンバーをさらに整備し,光電子顕微鏡(PEEM)に装着する。このPEEM を用いて,機械的に溝構造をつけた基板にPTFEおよびペンタセンをを蒸着することでそれらの分子が,溝構造によってどのように異方性配向を持つ膜成長をするのかを調べ,配向メカニズムを解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
光電子顕微鏡(PEEM)に装着する「その場蒸着有機膜作製チャンバー」本体は,研究室内にある別部品に一部変更を加える事で流用することができた。真空部品(ポンプや膜厚計)は,PEEM本体の装置を流用することで,テスト稼動することができるところまで行うことができた。しかしながら,ポンプや膜厚計を光電子顕微鏡本体の装置を流用したことによる排気量不足,またz移動機構の微小な真空漏れから,蒸着有機膜作製チャンバーの真空度が所定の値に達するのにかなり時間を要し,実験を十分すすめることができなかった。次年度は本体の真空度で使用する真空部品(膜厚計,真空計,ポンプ,z-移動機構)等を購入し,その場蒸着有機膜作製チャンバーを稼働させる。これを用いてPEEMを測定することで,異方性配向を持つ膜成長をするのかを調べ,配向メカニズムを解明する。 軟X線吸収スペクトルの測定用試料を作成するため,有機蒸着装置が必要となる。本装置自体はすでに既存であるが,稼働させるために必要なポンプや膜厚計等を購入する ペンタセン等の有機半導体の分子配向は,不純物によって大きな影響を受けることが知られている。溝構造による配向を正確に評価するためには,不純物による分子配向の影響を極力除かなければならない。そのために必要な高純度のペンタセンを得るための試料精製装置を稼働させる必要がある。精製は温度勾配法によって行われるが,本精製装置に必要な温度コントローラーおよび電気炉は既存である。これに必要な各種配管,真空部品等を購入する。。
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