2011 Fiscal Year Research-status Report
グラファイト/C60/グラファイト構造におけるナノベアリング機構の解明
Project/Area Number |
23560022
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
鈴木 勝 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (20196869)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 浩治 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (50190583)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 動摩擦 / QCM-AFM / グラファイト / C60 / ナノベアリング / トムリンソンモデル |
Research Abstract |
摩擦で失われるエネルギーは国民総生産(GNP)の約数パーセント(10 数兆円) に上り、エネルギー利用の効率化には摩擦の軽減・潤滑が求められている。 2003 年、研究分担者・三浦らは、グラファイトに蒸着されたC60 単分子層をグラファイトで挟んだ構造 (Gr/C60/Gr) を用意してAFM によって水平力を測定した。その結果、探針荷重が100 nN以下では水平力が非常に小さい低摩擦状態であることが明らかになった。研究の目的は、『グラファイト/C60/グラファイト構造 (Gr/C60/Gr) におけるナノベアリング機構の解明』であり、この系に特異な現象である低摩擦状態を動摩擦のエネルギー散逸測定と数値計算によって明らかにすることである。 平成23年度は、新しく開発した水晶マイクロバランス(QCM) と原子間力顕微鏡(AFM)を組み合せた装置による動摩擦のエネルギー散逸測定を、室温・大気圧下の条件で(1)Si3N4探針とグラファイト(Gr)基板、(2)Grフレーク探針とGr基板で行った。測定の結果、(1)においては、動摩擦のエネルギー散逸は、探針のすべり距離が基板の格子間隔以下ではすべり距離に比例して増加し、格子間隔以上では依存しない振る舞いを示すことが明らかになった。この測定結果は、1次元トムリンソンモデルで説明でき、動摩擦のエネルギー散逸の機構はすべり距離に依らないことを意味する。一方、(2)では(1)と比較して格子間隔以下において動摩擦のエネルギー散逸が大きい。これはGrフレークには異なる動摩擦のエネルギー散逸の機構を持つことを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では室温・大気圧下においてGr/Gr間およびGr/C60/Gr間の動摩擦のエネルギー散逸の測定を行うこと、試料準備を行うこととなっている。測定は予備測定のSi3N4/Gr間において興味深い性質が明らかになったことより、Gr/C60/Gr間は試料準備を中心に行うこととし、Gr/Gr間に加えてSi3N4/Gr間を中心に行うこととした。動摩擦のエネルギー散逸について重要な結果えられつつあると考えており、全体としては順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、平成23年度においてSi3N4/Gr間の動摩擦のエネルギー散逸で興味深い結果が得られたこと、またGr/C60/Gr試料準備が進んでいることもあり、当初計画であるGr/C60/Grに加えてSi3N4/Grについても温度依存性の測定を計画する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に基本的な研究設備を準備できたことより、平成24年度はAFMカンチレバー,水晶振動子等の消耗品、研究発表および研究の打ち合わせ等の旅費に使用する。
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Research Products
(4 results)