2011 Fiscal Year Research-status Report
液中その場材料表面元素分析のためのレーザープラズマの最適化
Project/Area Number |
23560023
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
作花 哲夫 京都大学, エネルギー理工学研究所, 准教授 (10196206)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 液相レーザーアブレーション / レーザー誘起ブレークダウン分光 / 水中その場元素分析 / レーザープラズマ / キャビテーションバブル / 気泡 / ダブルパルス / マルチパルス |
Research Abstract |
液相中の固体表面のレーザーアブレーション発光にもとづくその場元素分析の実現に向けて、レーザーの照射方法と発光スペクトルの関係、および生成するプラズマと気泡との関係について調べた。 ダブルパルス照射では、適当な時間遅延でゲートをかけて測定することで先鋭な原子発光スペクトルが得られる。ここでは時間ゲートなしで明瞭なスペクトルが得られるように、パルス間隔とパルスエネルギーの最適化を試みた。その結果、パルス間隔が15~50マイクロ秒、パルスエネルギーが0.4 mJおよび1.0 mJのときに自己反転構造が見られない先鋭なスペクトルが得られ、時間ゲート測定することなく液中その場元素分析が可能であることを示した。第1パルスで生成する気泡をシャドーグラフ法で観測すると、最適なスペクトルが得られる第2パルスのタイミングで気泡のサイズが最大になっていることがわかった。また、先鋭なスペクトルが得られるときに、気泡中のプラズマは液に接触すること無く発光領域を形成していることがわかった。さらに、最適なパルス間隔とパルスエネルギーで、10~12パルスのパルス列を発振するマルチパルスマイクロチップレーザーによる照射でも、時間ゲート測定することなく先鋭な原子スペクトルが得られることを明らかにした。 マルチパルスマイクロチップレーザーの第1パルスによって生成する気泡の成長をシャドーグラフ法によって調べたところ、後発のパルスが気泡を照射していても、気泡は収縮し始めることがわかった。気泡の膨張収縮を記述する理論モデルと比較することにより、第2パルス以降はほとんど気泡の成長に寄与しないことがわかった。水中に圧力プローブを設置して衝撃波を測定したところ、第1パルスでは衝撃波が生成するものの、第2パルス以降では衝撃波は生成せず、レーザーパルスのエネルギーが瞬時に気泡に与えられないことがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、水中でのレーザープラズマの生成過程とその時間発展のメカニズムを解明することが目的である。これに対して今年度、プラズマの生成に気泡のサイズが重要な役割を果たし、気泡の生成とプラズマの生成のタイミングを最適化することにより希薄なプラズマが生成し、また、これにより先鋭な原子スペクトル線を観測できることを見いだした。気泡のサイズとプラズマ生成の関係を解明したことは大きな進展である。
|
Strategy for Future Research Activity |
照射方法によってプラズマと気泡の関係がどのように異なるかを明らかにし、溶液を起源とする元素のプラズマ中での分布からプラズマ生成機構をより詳細に解明することを目指す。また、応用面では溶液種の分析も視野に入れて研究を進める。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、今年度に購入予定であった物品を研究の進捗状況に合わせて次年度に購入することとしたため、次年度使用額が生じた。次年度は、主として実験に必要な消耗品の他、研究発表のための旅費などに支出する。
|
Research Products
(7 results)