2011 Fiscal Year Research-status Report
波面符号化並列位相シフト法による瞬時複素振幅情報取得に関する研究
Project/Area Number |
23560039
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
野村 孝徳 和歌山大学, システム工学部, 教授 (80222206)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
沼田 卓久 和歌山大学, システム工学部, 教授 (80135673)
似内 映之 和歌山大学, システム工学部, 助教 (00304189)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ディジタルホログラフィ / 位相シフト法 / 瞬時記録 / スペックル / ランダム位相光 |
Research Abstract |
撮像素子における複素振幅分布が既知の光波を参照光として用いる.この参照光と物体光を干渉させホログラムを記録し,隣接する4 画素に注目する.本手法では物体光の振幅値と位相値は4 画素間で等しいと仮定し,それぞれao, φoとする.一方,参照光の各画素における振幅値はar1, ar2, ar3, ar4とし,位相値はφr1, φr2, φr3, φr4とする.このときの各画素におけるホログラムの強度値をI1, I2, I3, I4とする.I1, I2, I3, I4は既知であるar1, ar2, ar3, ar4, φr1, φr2, φr3, φr4と未知であるao, φoを含んでいる.I1, I2, I3, I4の連立方程式を解くことによりao, φoを算出する.本研究ではこの算出アルゴリズムを改善するとともに,再生画像が得られない条件を明らかにし,算出されたaoに対してメディアンフィルタを適用することにより改善できることを示した. 一方,参照光に用いるランダム位相光はレーザー光を拡散板に透過させることにより作製され,その光波は撮像素子面においてスペックルパターンを形成する.したがって,スペックルの平均直径を画素サイズに一致させた光波が参照光として適していると考えられる.隣接する画素間で位相が異なり,位相シフト量が発生するためである.一方,個々のスペックルが複数画素にまたがる光波は参照光に適さないと考えられる.隣接する画素間で位相が等しく,位相シフト量が得られないためである.また,個々のスペックルが画素サイズよりも小さい光波も参照光に適さないと考えられる.実験的な評価により,スペックルの平均直径が2~3画素のときに画質がもっとも高くなり,平均直径がそれよりも小さい場合も大きい場合も画質が劣化することを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
提案手法に適した参照光の複素振幅分布を明らかにすることを目的に研究を進めていった.参照光に用いるランダム位相光をスペックルパターンの観点から評価することに成功した.スペックルパターンの平均直径をスペックルパターンの自己相関関数の半値全幅から算出し再生画像の画質との関係を定量的に評価することに成功したからである. 物体光の複素振幅分布の算出方法に関しても当初の計画以上の成果を得た.物体光の振幅の突出値や無限大を除去するための信号処理方法を提案した.信号処理の方法としてメディアンフィルタを用いることを提案し,その効果をシミュレーションにより検証した.その結果,メディアンフィルタを用いない場合は再生像を認識することができず,用いた場合は認識することができた.これにより,メディアンフィルタを用いることの有用性を示した.また,そのウインドウの大きさは5画素×5画素が有用という結果が得られた.重み付き線形補間は実現できなかったが,メディアンフィルタの使用はそれに代わるアルゴリズムとして有効である. 提案手法により瞬時記録の実証例として1rpmで回転する運動物体のディジタルホログラムの取得・再生に成功した.ディジタルホログラム1枚あたりの露光時間は7msで,フレームレートは14fpsである. 以上のようなことから「おおむね順調に進展している」と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
参照光に使用する光波の複素振幅分布の精度と位相シフト法の精度の検証をおこなう.これまでは,参照光の複素振幅分布に着目し,提案手法に適した位相分布をスペックルの大きさをパラメータとして評価した.しかしながら,実際に使用する際には,参照光の複素振幅分布を取得した時刻と物体光の干渉縞(ホログラム)を取得した時刻が異なる.このことは,参照光の複素振幅分布が算出したデータそのものであるという保証がされないということである.そこで,参照光の複素振幅分布の許容度を明らかにする.昨年度,参照光の位相分布の評価と合わせ,提案手法に適した参照光を決定する. 瞬時記録の特徴を活かし,同時に二つの情報を取得できるようにする.ディジタルホログラフィックディスプレイの入力画像の取得に用いる.運動物体の両眼視差用ディジタルホログラムを取得する必要があるため,同時刻に2組の位相シフトディジタルホログラムの取得が必要である.そのため,波長(あるいは偏光方向)の異なる光源と波長選択性(偏光選択性)のある光学素子を用いて2台のカメラで取得をおこなう.波長が異なる場合は再生画像の大きさ(空間分解能)が異なるため,そのための補正をおこなう(2008年にApp. Opt.に発表済成果の適用が可能).偏光が異なる場合はディジタルホログラフィックディスプレイの応用の他に,物体の偏光画像(物体の場所ごとのジョーンズベクトルやストークスパラメータ)を得ることが可能,すなわち,リアルタイムに偏光モニタリングが可能となり,新たな応用分野が開拓できる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現在はHe-Neレーザーを用いて瞬時記録位相シフト法を実現している.「今後の研究の推進方策」でも述べたように,複数の位相シフト法を同時に実現するためには独立な光源が必要となる.そのため光源(半導体レーザー,波長532nmを予定)を物品として計上している.これ以外には実験を遂行する上で必要な光学素子や汎用撮像素子,電子部品を計上している.コンピュータによる回折積分計算等を高速で処理するためのコンピュータ/Graphic Processing Unitの購入を予定している.その他の主な使途は研究成果の発表等の旅費であり,本研究の成果を広くアピールすると同時に,当該分野の研究者はもちろん,その他幅広い研究者との情報交換をおこない,今後の研究の推進に役立てる. 平成23年度に残額が生じたのは,参照光に必要なスペックルの生成をコントロールするために必要な光学素子が残金を越える金額であったためである.既に参照光に適した位相分布の検討をおこなっていたが,さらに詳細な検討をおこなうための素子である.性能の劣る光学素子等の購入に充てることも考えたが,次年度に予定していた光学素子を購入し研究成果を挙げることが本来の使用目的であると判断した.「現在までの達成度」に記載の通り,研究はおおむね順調に進展しており,このことによって23年度の研究に支障をきたしたものではない.
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