2012 Fiscal Year Research-status Report
波面符号化並列位相シフト法による瞬時複素振幅情報取得に関する研究
Project/Area Number |
23560039
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
野村 孝徳 和歌山大学, システム工学部, 教授 (80222206)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
沼田 卓久 和歌山大学, システム工学部, 教授 (80135673)
似内 映之 和歌山大学, システム工学部, 助教 (00304189)
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Keywords | ディジタルホログラフィ / 位相シフト法 / 瞬時記録 / スペックル / ランダム位相光 / 選択アルゴリズム |
Research Abstract |
提案している位相シフト法では,参照光の複素振幅は特定の分布である必要がないため,汎用的な素子を用いて実現することができる.この長所を活かして,拡散板を用いてランダムな複素振幅分布とした光波を参照光に用いている.これまでに提案手法に適した参照光の複素振幅分布の特性を,スペックルの大きさの観点から明らかにしている. 今年度は,提案手法による物体光の算出アルゴリズムの改良をおこなった.本手法では隣接画素間の演算によって物体光の複素振幅を算出する.この際,複素振幅の算出式は一意に決定されるものではなく複数存在する.加えて,本手法では参照光の隣接画素間位相の差が位相シフト量に相当する.この差が有意な値のとき,物体光の複素振幅分布の算出が可能であると考えられる.したがって,参照光の複素振幅に応じて演算を使い分けることにより,単一の使用の場合に比べて再生像の画質を向上できる. 提案手法では,3種類の複素振幅の算出式(演算方向)が存在する.すなわち,近傍4画素の画素の水平方向,垂直方向,斜め方向の演算によって算出するものである.これらの中から最適な演算方向を用いて物体光の複素振幅分布を求める手法が提案手法である. 参照光の複素振幅に応じてこれらを使い分けることにより,単体の使用の場合に比べて再生像の画質を向上できることをコンピュータシミュレーションおよび光学実験によって示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
空間光変調器を用いた符号化波面によって提案手法の有用性を実験的に実証する予定であったが,アルゴリズムの改善が進展中であったためそちらに注力した.「研究実績の概要」で述べた通り,これまでに提案していたアルゴリズムの再生像よりも高品質な画像を得ることに成功した.特筆すべき点は資料するデータ量は一切増加していないという点である.このことにより,提案手法に適した符号化波面の生成には自由度があり,空間光変調器を用いることなく,拡散板とアパーチャーによって実現できることも示した.すなわち,当初の予定であった「空間光変調器を用いた符号化波面によって提案手法の有用性を実験的に実証する」ことを別の形で実現したことになる.初年度に得られた動画データを含む全ての実験データにおいて,改良アルゴリズムが有効であることも示している. 得られた改良アルゴリズムに関する国際学術論文を投稿中でもあることから,本研究は概ね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は提案手法の応用研究を実施する.これまでは,参照光と物体光には明確な違いがあるものという考えのものとに研究を推敲してきた.これは従来のホログラフィの考え方に束縛されていたからである.提案手法は参照光に自由度を与える(位相の異なる平面波である必要がない)ため,いわゆる物体光を参照光として用いることんができる.Aを参照光,Bを物体光として記録されたディジタルホログラムに対し,Bを再生光として使用すればAを読み出すことができる.このことにより,フィルムを用いた古典的なホログラフィでしか実現し得なかった連想メモリをディジタルホログラフィを用いた最初の実現であることを意味する. 他の応用としては,ディジタルホログラフィックディスプレイの入力画像の取得に用いる.運動物体の両眼視差用ディジタルホログラムを取得する必要があるため,同時刻に2組の位相シフトディジタルホログラムの取得が必要であるため,本手法が有効である. 工業的な応用としての偏光情報の取得や屈折率分布断層イメージングへ提案手法を適用する.いずれも動的現象の取得や取得時間の短縮化,実験装置の可動箇所を少なくするという観点から提案手法は極めて有用である. 以上の研究を実用的なものとするために,ディジタル処理の高速化も図る.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今後の研究の推進方策で述べた応用研究を推敲するための実験器具(光学素子,コンピュータ,資料等)の購入および研究成果の国内会議(日本光学会(応用物理学会)学術講演会他)および国外会議の発表(SPIE Optics + Photonics 2013, San Diego, CA, USA他)のための旅費に使用する.
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