2013 Fiscal Year Research-status Report
光照射によるナノ領域の光物性制御の理論解析と高密度光メモリへの応用
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23560045
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Research Institution | Ishikawa National College of Technology |
Principal Investigator |
佐野 陽之 石川工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (80250843)
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Keywords | 光記録 / 超解像 / 第一原理計算 / 光学誘電率 / 連成物理シミュレーション |
Research Abstract |
1.高温・熔融状態の光学誘電率の第一原理計算: 第一原理計算ソフトウェアVASPを用いて、第一原理分子動力学計算(ab-initio MD)を行い、溶融状態InSbをシミュレーションした。結晶状態InSbをスタートとして、1500K-6ps→900K-6ps(状態A)→900K-12ps(状態B)のシーケンスで、2つの溶融状態InSbの構造モデルを作成した。この二つのモデル構造をもとに、電子状態および光学誘電率の計算を行った。溶融状態InSbの光学誘電率の計算結果は、連携研究者によって測定されたデータと良く合うことが確認できた。また、溶融状態InSbの光学誘電率は結晶InSbと大きく異なることが分かった。InSbの電子状態は溶融により半導体から金属へ変化し、これが光学誘電率の変化を引き起こすことが計算からも確認された。 波長405nmにおける光学誘電率変化がInSbと逆の傾向を示すSbTe系物質として、Sb2Te3の第一原理計算を始めた。まず結晶Sb2Te3の電子状態計算を行った。結晶構造がInSbより複雑であるためブリルアンゾーンも複雑となり、現在バンド構造の解析を行っている。 2.光伝播-熱伝導の連成シミュレーション: 前年度に引き続きInSbを機能層とする超解像現象の再現シミュレーションを行い、入射光パワーやフォーカス条件を変えた超解像状態の応答関数を求めた。その結果、比較的低パワーの条件において、応答関数のダブルピークがより顕著に表れることが分かった。また、連携研究者がInSbを機能層とするROMディスクを作成し、再生シグナル波形の測定を行った。シミュレーションにより求めた応答関数から予測シグナルを計算し、測定波形データと比較した結果、比較的高い入射光パワーの条件の応答関数(ダブルピークがあまり顕著でない場合)で測定データが良く説明できることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の実施状況報告書の「今後の研究の推進方策」で述べたとおり研究を遂行した。第一原理計算により、InSbの結晶から溶融状態への遷移に伴う電子状態と光学誘電率の変化を求めることができた。これらの計算結果は対応する実験データと良く合っており、本研究の大きな成果となっている。SbTe系物質の第一原理計算は、まだ結晶状態の電子状態計算を始めたところである。結晶構造がInSbより複雑であるためバンド構造を解析するのが難しく、計画より少し遅れ気味である。 光伝播-熱伝導の連成物理シミュレーションに関しては、超解像状態の応答関数の入射光パワー依存性を求め、対応する実験データとの比較検討を行うことができ、ほぼ計画通り進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
InSbの第一原理計算に関しては結晶および溶融状態の計算結果がほぼ出揃っているので、詳しく解析し外部発表を行っていく。また、SbTe系物質の第一原理計算に関しては、MD計算によって溶融状態のモデル構造を作成し、電子状態および光学誘電率の計算を進めていく予定である。本研究で扱っているInSbとSbTe系物質は、波長405nmにおける光学誘電率変化が逆の傾向を示すが、この起源について解析・考察を行い、超解像のための機能層材料探索の指針を検討していく。 光伝播-熱伝導の連成物理シミュレーションに関しては、InSbを機能層とする超解像の応答関数に関する結果は非常に重要であるため、より詳しく解析し外部発表を行っていく。また、Sb2Te3を機能層とするシミュレーションを行い、超解像の発現機構及びその性質に関して解析し、InSbとの違いについても検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は概ね予定通り研究費を使用したが、旅費やその他の経費が予定より僅かに少なかったため約2万円を次年度に繰り越すことになった。 次年度は、計算データを保存する外部データストレージの購入、計算及び解析のためのソフトウェアの購入・更新費用、研究成果の外部発表のための旅費・論文投稿料として使用していく予定である。
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