2012 Fiscal Year Research-status Report
3次元フォノニック結晶を利用した高性能くさび型音響導波路の設計
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23560052
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田中 之博 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00281791)
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Keywords | フォノニック結晶 / 音響波 / 導波路モード / バンドギャップ |
Research Abstract |
前年度は、主として導波路を設置するための基板である3次元フォノニック結晶中を伝播する弾性波に対するバンド構造の計算を行ったが、本年度は、高効率くさび型導波路の設計において、もう一つの柱となる厚さが先端からの距離のべき関数として変化するくさび型導波路における先端近傍にエネルギーを集中させながら伝播する導波路モードの研究をおこなった。楔の先端が有限の幅を持つ場合、導波路モードは有限の時間だけ近傍にとどまることができるが、その滞在時間(位相時間)を、Timoshenkoモデルを用いて評価した。その結果、べきの数が大きくなるにしたがって、滞在時間は長くなることを見出した。また、先端の有限幅の大きさに対しても滞在時間が大きく依存することを示した。さらに、3次元空間における弾性体の運動方程式を、時間領域有限差分法(FDTD法)を用いて正確なシミュレーションを行うことによって、先端部分での変位ベクトルの周波数スペクトルを求め、スペクトルピークの位置と幅から固有振動数とその寿命の見積もりをおこなった。その場合においてもTimoshenkoモデルと同様に、べきの数が大きくなるに従い、固有振動数が低周波数側にシフトし、寿命が長くなることを見出した。FDTD法を用いた計算においては、縦波や横波などすべての励起可能なモードが計算に含まれているが、その中で導波路モードになる可能性をもつモードが、低周波数領域において、たわみモードのみであることを見出した。Timoshenkoモデルにおいては、近似のため、たわみモードしか考慮されていない。また、伝播方向の波数ベクトル依存性を見ると、固有振動モードは波数ベクトルの大きさが大きくなるに従い、くさびの先端にエネルギーを集中させ、長い寿命を持つことが見出された。これらの結果は、導波路の設計の際に有用になると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年に引き続き、3次元フォノニック結晶のバンド計算を精度よく計算することを試みたが、FDTD法においては、使用メモリーが膨大になり、高精度計算は達成されなかった。より少ないグリッド数で実行できるように、差分法を4次の精度まで上げたFDTD法を用いて計算を行ったが、未だに改善された結果は得ていない。また、今年度は、くさび型導波路と3次元フォノニック結晶を結合した系を取り扱う計画だったが、上記のように3次元フォノニック結晶のバンド計算に予想以上に時間を費やしてしまい、結合した系の計算をまだ実施していない。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の続きの課題として、3次元フォノニック結晶における音響波バンド計算を、改良したFDTD法を用いて、さらに良い精度で実行する。前年度において、厚さが冪関数で変化するくさび型導波路の導波路モードの解析はほぼ終えたので、その結果を踏まえて、無フォノン環境を形成する3次元フォノニック結晶を基板とした高性能くさび型導波路の設計を試みる。設計にあたり重要な点は、 (A)くさび型導波路をどのようにフォノニック結晶基板に取り付けるか、 (B)くさび型導波路の大きさとフォノニック結晶の周期の関係はどうすべきか の3つの項目があげられる。特に、(B)は重要な要素で、くさび型導波路の形状と、フォノニック結晶の周期長(周波数ギャップの位置)との関係を見いだす必要がある。したがって、その関係を見いだし、最も高性能なくさび型導波路を与えるパラメータの最適 化を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度の未使用額発生の理由は、年度末に行われた応用物理学会の参加費(12,000円)および消耗品の購入であり、申請が年度中に間に合わなかったことによる。最終年度の研究費の主な使用計画は、応用物理学会および日本物理学会等の参加料および旅費(約300,000円)、北海道大学に設置されている大型計算機使用料(約400,000円)である。
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Research Products
(12 results)
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[Presentation] A diode for acoustic waves2012
Author(s)
Daichi Kono, Yukihiro Tanaka and Norihiko Nishiguchi
Organizer
The 3rd Hokkaido Univ. - Chungbuk National Univ. Joint Symposium on Sustainable Engineering
Place of Presentation
北海道大学(北海道札幌市)
Year and Date
20120828-20120830
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