2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23560056
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Research Institution | Nippon Institute of Technology |
Principal Investigator |
青柳 稔 日本工業大学, 工学部, 教授 (00342436)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 計測工学 / 熱工学 / 透過装置 |
Research Abstract |
当初計画を見出しに示しながら研究実績の概要を報告する。1.赤外線検出装置の導入:赤外線検出装置は、当該研究の成果を左右する最も重要な装置である。赤外線検出装置の主だったメーカー3社(FLIR, Apiste, NEC Avio)の赤外線検出装置のデモを、実際の試料に対して行い、赤外線検出装置の選定を半年かけて実施した。その結果、当該研究に最も適したNEC AvioのR300という赤外線カメラを赤外線検出装置として導入した。この赤外線カメラは、温度の変化を0.05℃の最小検知温度差で、1/60秒の間隔で検出することが出来るため、当該研究には十分な性能を有すると考えられる。2. 急速加熱装置の作製:金属容器の内部の液体量を検出するには、ハイパワーのフラッシュランプによる金属容器の瞬間加熱が必要である。検討実験の結果、当該研究には、プロ用の写真撮影に使われる1KW以上のフラッシュランプが最適という結論を得たので、それを改造することで瞬間加熱装置を作製した。瞬間加熱装置は外部からのトリガ電圧で発光するが、そのトリガ電圧を発生する電子回路等も作製した。3.実験装置の組み立てと簡単な実験を開始する:上記の赤外線検出装置と瞬間加熱装置を組み合わせて、実験装置を組み上げた。そして、次年度から本格的な実験を開始するために、実験装置の性能を把握することを目的として基礎的な実験を実施した。実験の結果、フラッシュランプが発光した後に、瞬間加熱したフラッシュランプの残熱が測定結果に影響を与えるなど、幾つかの課題を見出した。その対策のための実験装置(瞬間加熱装置部分)の設計をおこない、部材の発注、納品、組み立てをおこなった。現在は、その効果を確認している段階である。また、実際に研究実験を始めた時に必要となる、各種金属材料や実験治具の設計を行い、既に納品されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り本年度は、次年度から実施する本格的な研究実験のための準備期間である。本年度に達成すべき目標は、1.赤外線検出装置の導入、2.急速加熱装置の作製、3.実験装置の組み立てと基礎的な実験の開始である。「研究実績の概要」の欄で示した様に、これらの当初計画の目標は全て達成することができた。また、基礎的な実験を実施した結果から、作製した実験装置の課題を把握し、対策を打つ準備ができている。さらに、赤外線検出装置の選定をおこなっている期間に、熱電対を用いて当該研究を行うのに必要な予備実験を実施している。これは、フラッシュランプを用いて金属板を瞬間加熱して、その金属板内部の熱伝導特性を、熱電対を用いて調べる実験である。金属板としてアルミニウム、銅、スンテンレス等、本格的な研究実験を開始した場合に試料として使用する材料を用い、その厚みを変えながら、フラッシュランプによる瞬間加熱と熱伝導特性を測定した。熱電対には、熱電対自身の熱容量の影響が少ないシース外形0.08mmのK-typeの熱電対を用いた。この熱電対とデータロガーの応答時間は1msec以下であり、フラッシュランプ(発光時間数十msec)によって加熱された金属板の冷却温度特性を測定することができた。この結果、試料である金属板の表面の反射が、考えていた以上に、金属板の過渡熱特性に影響を与える事が分かった。さらに、この対策として黒体スプレーを試料表面に塗布することで、金属板による光の反射を減少させ、安定して過渡熱特性を測定できる事を実験により確認できた。以上の様に、当初計画していいた準備が終了し、問題点の把握と対策、そして、基礎的な実験を行う事が出来たので、当初年度としては計画以上に目標を達成できたと感じている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り平成24年度は、1.実験装置の性能評価の開始、2.研究実験の本格的な始動、3.学会発表および論文執筆の準備をおこなう。1については、平成23年度の基礎的な実験で概略終了しているが、平成23年度の実験により明らかになった課題の対策のために、実験装置の改良をおこなった為、改良した装置を用いて再度実験をおこなう。平成24年度早々にも再実験に取り掛かれる予定である。2については、具体的には次の研究実験を計画している。1.金属容器の厚さと金属板の過渡熱伝導特性の関係を調べる実験:銅板を試料として、その厚さを変えながら、フラッシュランプによる瞬間加熱特性と冷却特性を、熱電対と赤外線検出装置を用いて測定する実験をおこない、瞬間加熱による金属板の熱伝導特性についての知見を得る。この結果については平成24年度秋に国内での学会発表を計画している。2.金属容器の厚さと液体観察の関係を調べる実験:アルミニウム金属容器を試料として、その中に水を入れて、フラッシュランプによる瞬間加熱特性とその冷却特性により金属容器内の液体観察をおこなう。金属容器の厚みを変える事で、液体が入った金属容器の伝熱特性を把握する。この過渡熱特性を調べる実験は、当該研究の中心になる実験である。3.容器の種類と液体観察の関係を調べる実験:容器の材質をアルミニウム以外の金属やプラスチックに変えて、フラッシュランプによる瞬間加熱特性と冷却特性により液体観察をおこなう。4.これらの実験に関しては、フラッシュランプの発光強度を変化させて、また、ランプの種類をハロゲンランプや赤外線ランプ等に変えて同様の実験をおこなう。2から4の実験結果に関しては、平成24年秋から国内での学会発表を計画している。また、1から4の結果をまとめて、平成24年度以降、継続的に国際学会に論文を投稿する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は計画通り研究が進んだので、次年度は早々に本格的な研究実験を開始する。本格的な研究実験を開始するにあたって、金属板などの実験試料の追加購入に研究費を使用する。また、平成23年度に実施した基礎実験の結果から、フラッシュランプ等の光源の絶対放射強度を把握する事の必要性が明らかになっているので、絶対放射強度の測定が可能な分光器と分光器の基準光源の購入を検討する。当該研究では瞬間加熱装置にフラッシュランプを用いるが、フラッシュランプの発光強度が強いこと、フラッシュランプの発光時間が数十msecと短いために、光の減光フィルターと分光器の測定トリガに工夫が必要な事が明らかなので、慎重に検討後、分光器メーカー等の選定をおこなう。さらに、平成24年度は、国内での口頭発表を秋と春に計画しているので、そのための旅費に研究費を使用する。秋期は応用物理学会学術講演会(愛媛大学・松山大学)、春期は応用物理学関係連合講演会(神奈川工科大学)を予定している。また、研究が当初計画よりも順調に進んでいるため、口頭発表と並行して、国際学会への論文投稿を計画する。論文投稿の英語論文の校正費用に研究費を使用する。さらに、当該研究の理論的な裏付けを検討するためには、伝熱工学の応用理論が必要であり、そのために必要な文献の購入についても計画している。以上、平成24年度は、実験材料の購入、分光器と光源の購入、研究発表の旅費、論文校正の費用に研究費を使用する計画である。
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