2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23560056
|
Research Institution | Nippon Institute of Technology |
Principal Investigator |
青柳 稔 日本工業大学, 工学部, 教授 (00342436)
|
Keywords | 計測工学 / 非破壊検査 / 伝熱工学 / サーモビューア / 欠陥検出 / 赤外線温度計測 |
Research Abstract |
平成24年度の研究計画を基に、研究実績の概要を報告する。 1.平成23年度に作製した実験装置の性能評価と測定実験の実行:平成23年度から平成24年度前半にかけて作製した実験装置の性能評価と、その装置を用いた測定実験を本格的に開始できた。実験装置の評価実験の結果、室温の状況下において、環境温度の変動および繰り返し測定誤差を含めて温度分解能1℃以下で、試料の温度分布計測が可能である事が確認できた。また、測定した2次元温度分布データを1/60秒の間隔で得られる事を確認できた。さらに、専用ソフトウエア用いて、得られた温度分布データをスムーズ解析する手順を確立できた。基礎実験を通して、想定以上の結果が得られたため、実際の事象を測定対象とした実験を進めることができた。 2.実験結果と比較しながら計測原理に関しての検討と検証を進める:さまざまな実際の事象を測定対象として実験をおこなうことで、計測原理の検討を進める事ができた。水位観察実験の測定対象は、金属容器、樹脂容器、ゴム容器であり、それらの容器内部の水位を観察できた。また、木片、パウチフィルムの、内部クラック、接着不良を検出することができた。これら種々の観察実験により、統一的な計測原理が確立できると考えていたが、データ解析の結果、当該測定手法の統一的な計測原理は無く、従前から伝熱工学の分野で構築されている、熱伝導、熱伝達、放射伝熱の3つの理論を組み合わせることで、実験および観察結果を説明できる事を見出した。 3.実験結果が得られた段階で学会発表をおこなう。また、平成25年度に論文発表が行えるように準備を始める:想定よりも早めに成果が得られたので、応用物理学会の全国大会での発表4件、査読ありの論文掲載1件を成果として発表することができた。計画以上に、学会での発表を数多く行う事ができ、また、研究成果の一部を論文誌に掲載することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度において、達成すべき目標は以下の3つである。1.作製した実験装置の性能評価と実験の実行、2.実験結果と比較しながら計測原理に関しての検討と検証、3.実験結果が得られた段階で学会発表をおこない、また、平成25年度に論文発表が行えるように準備を始める。これらの目標は全て達成することができた。平成23年度に、慎重に選定を進めた赤外線検出装置の性能と機能が、当該研究に最適であることが、年度目標を達成できた要因である。 目標1の作製した測定装置の性能評価では、室温環境において、温分解能1℃以下で温度計測を行う事が確認できた。装置の性能を把握できたので、数多くの実験試料を用いて観察実験を実施した。金属容器中の水位の観察では、金属の種類をアルミニウムおよび銅とし、また、その厚みを変えて実験をおこなった。その結果、いずれも水位の観察を行う事ができた。さらに、容器の材質を、エポキシ樹脂やシリコンゴムなど金属以外に変えて実験をおこない、金属容器と同様に水位を観察できた。さらに、木材内部のクラックの観察や、パウチフィルムの接着不良の観察も試み、クラック、そして、接着不良の検出ができた。 目標2の計測原理に関しては、上記の種々の実験結果から、全てを説明する統一的な測定理論の構築を検討した。その結果、統一的な測定理論はなく、伝熱工学の分野で確立されている、熱伝導、熱伝達、放射伝熱の3つの理論を組み合わせることで、実験結果を説明できる事を見出した。しかし、これらの原理を実際の現象に適応するには、多くの近似が必要であり、どこまで近似を適用して良いかを確実に把握するには、さらに検証実験が必要である。 目標3の学会発表と論文発表の準備については、第73回応用物理学会学術講演会で2件の発表、第60回応用物理学会春季学術講演会で2件の発表、そして、海外の論文誌に投稿論文が1件掲載された。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は当該研究の最終年度である。研究実験を詰めるとともに、研究のまとめについても重きを置く。下記の4項目を研究計画とする。1.平成25年度前半において、当該観察手法を確立する為に不足しているデータ、抜けているデータの測定をおこなう。2.実施した実験と理論の検討結果を、学会発表、および、論文として発表する。3.当該観察装置による計測理論の確立をおこなう。4. 平成25年度後半において3年間の研究のまとめとして、ホームページを利用して研究成果を公表する。 計画1.については、(1)樹脂管内部において流れのある液体の観察をおこなう。これまでは、容器内部の液体は静止した状態であったが、流れのある液体の観察についての研究を行う。(2)当該観察手法の検出限界を見極める事は、観察手法の確立に必要不可欠であるので、光源や、液体の種類を変えることで、この観察手法の限界を見極める実験をおこなう。これらを実施する事で、現時点で考えられる全ての実験を実施できた事になり、観察手法が確立できるものと考える。 計画2.については、応用物理学会での発表3件を計画している。また、投稿論文2件の掲載を目指す。 計画3.の計測理論ついては、種々の実験を通して現象をより深く理解する事で、理論の確立がなされると考えている。特に、平成24年に実施した様々な材料に対する実験によって、当該観察手法の統一的な計測理論は無く、伝熱工学の分野で構築されている、熱伝導、熱伝達、放射伝熱の3つの理論を組み合わせることで、実験結果を説明できる事が明らかになったので、実験範囲を広げる事でこれら理論の適用性を確実なものにする。 計画4.については、大学、あるいは、学科のホームページからリンクするページを作ることで、研究成果を公表することを考えている。リンクが難しい場合には、学会発表、および、論文の掲載をもってこれに替える。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
3年間の研究期間の最終年度であるので、成果を意識して研究費を使用する。 平成25年度の前半では、残された研究課題について重点的に実験を進める。残された研究課題は、1.管の中を流れる液体の水位の観察、2.当該観察手法の限界に関する検討である。これらの実験のために、実験材料や装置部品の追加購入に研究費を使用する。 1.の管の中を流れる液体の水位の観察には、金属管や樹脂管の中に定量の水を流す必要があり、流量をコントロールする汎用ポンプなどの購入を計画している。 2.の検出限界に関する研究では、これまで容器内の水位の検出を目的として容器内の液体として水を使っていたが、当該観察手法の実用性を広げるために、シリコンオイルやマシンオイル等の、水以外の液体を対象として実験をおこなう。また、現在、測定装置において試料の瞬間加熱用の光源として、スタジオ撮影で使われるハイパワーのキセノンフラッシュランプを使用しているが、このランプはフラッシュの放電時間や、放電エネルギーを変える事ができないので、フラッシュランプの放電回路の改造を行う事で、それらを変化して実験をおこなう。さらに、キセノンフラッシュランプ以外の光源として、ハロゲンランプなどでも実験を行う計画である。これら、実験材料や部品の購入を計画している。 また、平成25年度は全般的に、研究成果の発表をおこなう計画である。秋に国内での口頭発表を2件計画しているので、そのための旅費に研究費を使用する。発表は、応用物理学会秋季講演会(同志社大学京田辺キャンパス2013年9月16日(月)~20日(金))を予定している。その他、国際論文誌への論文投稿を2件計画しており、そのための英語論文の校正費、および、論文掲載費に研究費を使用する。
|