2012 Fiscal Year Research-status Report
ナノ結晶ゲルマニウム薄膜を用いた熱光発電素子に関する研究
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23560057
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
磯村 雅夫 東海大学, 工学部, 教授 (70365998)
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Keywords | ゲルマニウム / 光電変換 |
Research Abstract |
本研究では熱光発電用の赤外線吸収光電変換材料として、薄膜結晶ゲルマニウムに注目している。薄膜結晶ゲルマニウムの作製法として生産性の高い反応性スパッタ法を検討している。スパッタ法を用いたプロセスでは、イオン衝突によるダメージが懸念されており、プラズマ電位の制御によるダメージの低減が重要である。本年度は、カソード電極に自己バイアス以下の負のDCバイアスを印加することによるプラズマ電位の低減とゲルマニウムの製膜に与える効果を検討した。 実験はゲルマニウムターゲットを設置したRFマグネトロンスパッタ装置のカソード電極に高周波カットフィルターを介して自己バイアス以下の負のDCバイアスを印加することで行った。RF電力100W、圧力7Pa、アルゴン5sccm、水素50sccmの製膜条件において、負のDCバイアスを自己バイアス値である-120Vより-200Vまで変化させた。プラズマ電位は負のDCバイアスの増加に伴い71Vより46Vまで単調に減少すること、浮遊電位も41Vから28Vに減少することが確認できた。これは負のDCバイアスをカソード電極に印加することでプラズマ電位が低減できることを実験的に示す初めての報告である。 ゲルマニウム製膜への効果に関しては、負のDCバイアスの増加に伴い製膜速度が3倍程度に増加することが確認できた。これは、負のDCバイアスの増加によりプラズマとカソード電極の電位差が大きくなり、スパッタ効果が促進されたためだと考えられる。また、イオンダメージの影響を反映する結晶性が負のDCバイアスの増加により改善することが確認できた。これはイオンダメージが低減したことを明白に示す結果である。以上の結果から、負のDCバイアス印加にはプラズマ電位を低減させると同時に製膜速度を向上させる効果があり、スパッター法において低イオンダメージかつ高製膜速度を実現できることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
負のDCバイアスを自己バイアスである-120Vから-200Vまで低下させ印加したことで、ゲルマニウム薄膜の結晶化率が向上するとともに製膜速度が3倍程度に増加することが確認できた。スパッタ効果を促進させると同時に、イオンダメージを抑制できることを示す結果であり、スパッター法において低イオンダメージかつ高製膜速度を実現できることを示唆している。これらの結果は反応性スパッタによる高品質薄膜結晶ゲルマニウムの作製を実現するため、非常に有効な指針を今後の研究に与えるものである。この結果をもとに次年度は目標達成に向け大きく進展することが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までに得られている成果をもとに以下の項目を検討する。 1.プラズマ制御を追求し、成膜用基板とプラズマとの電位差をできる限り低減。 2.結晶ゲルマニウム薄膜の高品質化を進め、熱光発電に十分な赤外領域での光電変換特性を得る。 2.成膜速度の向上による実用性を確認する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度予算は主に、ゲルマニウム薄膜の材料であるゲルマニウムターゲットの購入と結晶性なの各種分析費用に用いる予定である。また、精度の高い実験を進めるため、スパッタ装置の保守や消耗品の交換に支出する。 昨年度予算は実験機材や消耗品発注の時期が少々遅れたため、今年度に若干繰り越されたが、研究計画には支障はない。
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