2012 Fiscal Year Research-status Report
ジョルダン問題およびクロネッカ問題の安定かつ効率よい数値解法の確立
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23560062
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
重原 孝臣 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (60206084)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桑島 豊 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (40451736)
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Keywords | 数値線形代数 / ジョルダン標準形 / クロネッカ標準形 |
Research Abstract |
本研究課題(実施期間:平成23-27年度)では、数値線形代数において最も難しいテーマの一つであるジョルダン問題およびクロネッカ問題に対する信頼性の高い数値計算アルゴリズムの確立およびプログラム実装を目指している。本研究は、ジョルダン問題についてはJSIAM Letters, Vol.2, pp.119-122の成果を前提に、また、クロネッカ問題についてはJSIAM Letters, Vol.1, pp.60-63の成果を前提に実施するものである。 初年度に当たる平成23年度には、ジョルダン問題・クロネッカ問題の両方に対してユニタリー変換を活用した標準的な前処理の導入を行い、特にジョルダン問題については、前処理によって得られるブロックシューア標準形(BSF)のジョルダン問題を効率よく解くためのアルゴリズムを設計し、その成果をJSIAM Letters, Vol.4, pp.9-12に公表した。 平成24年度は、クロネッカ問題に対する初年度の成果を主に数理的側面から改良・拡張し、前処理により得られる一般上三角行列束(GUPTRI)に対して以下の成果を得た。(1)標準形がL型ブロックのみから構成される行列束の場合には、簡明な階層構造が存在し、それを活用することにより、前年度に設計したガウス消去に基づくアルゴリズムを性能面で大幅に凌ぐ再帰的アルゴリズムが構築できることを示した。(2)GUPTRIの5つの対角ブロックのそれぞれに対するクロネッカ問題の解が既知の場合には、それを活用して、GUPTRI全体に対するクロネッカ問題を解くためのアルゴリズムを構築できることを示した。(3)以上を総合して、任意のGUPTRIに対するクロネッカ問題を解くためのアルゴリズムの構築に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
クロネッカ問題に関して、任意のGUPTRIに対するクロネッカ標準形・基底を計算するためのアルゴリズムの構築に成功し、これによって、任意の行列束のクロネッカ問題をGUPTRIを経由して解くための基本的なフレームワークを確立できた。 また、本研究課題では、ジョルダン問題・クロネッカ問題に対して、数値的摂動に頑健なアルゴリズムの構築を一つの柱に掲げているが、今年度の研究を通して、ジョルダン問題における種々の悪条件問題に関して精度劣化の要因を精査することで、アルゴリズムの改良に向けて多くの有用な知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度について。クロネッカ問題について、平成24年度に構築したアルゴリズムを実装し、種々の数値実験を通して有効性を確認する。精度や性能面で問題があれば、その要因を明らかにした上で改良を加える。また、特異な一般固有値問題や多変量解析等への応用を検討する。ジョルダン問題について、悪条件問題に対する対応について検討を継続する。特に、精度低下を招く典型的なパターンを整理し、各パターンに対する有効な対処法を検討する。 平成26年度以降について。平成25年度までに確立したアルゴリズムに必要に応じて改良を加えるとともに、アルゴリズムの並列化手法について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、年度当初の補助金受入額(直接経費:60万円、間接経費:18万円)とほぼ同額を活用して研究課題を遂行したが、平成23年度の未使用額相当(直接経費:55万円程度)が残っている。このため、平成25年度の本課題の研究経費は、交付予定額と併せ、直接経費145万円程度、間接経費27万円となる見込みである。 平成25年度は、直接経費を概ね以下のとおり使用する計画である。物品費(主として重原(代表者)・桑島(分担者)および課題遂行を補助する大学院生が使用するPCおよびソフトウェアの購入費)約60万円、外部発表のための旅費約20万円、プログラム実装等のために雇用する大学院生の人件費約40万円、その他約20万円。なお、重原および桑島の使用内訳は概ね重原が110万円程度、桑島が30万円程度とする。
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Research Products
(2 results)