2013 Fiscal Year Research-status Report
ジョルダン問題およびクロネッカ問題の安定かつ効率よい数値解法の確立
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23560062
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
重原 孝臣 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (60206084)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桑島 豊 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (40451736)
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Keywords | 数値線形代数 / ジョルダン問題 / クロネッカ問題 |
Research Abstract |
本研究課題(実施期間:平成23-27年度)は、数値線形代数において最も難しいテーマの一つであるジョルダン問題、および、それをさらに一般化したクロネッカ問題に対する信頼性の高い数値計算アルゴリズムの確立およびプログラム実装を目指すものである。 ジョルダン問題については、前年度までに開発してきたアルゴリズムに概ね以下の2点の改良を加えた。(1)標準的な前処理を用いて入力行列をブロックシューア標準形(BSF)に相似変換したのち、さらにBSFをブロック対角形に相似変換する手続きを導入。これによって、元のジョルダン問題は冪零行列のジョルダン問題に帰着する。(2)冪零行列のジョルダン問題を再帰的に解く際に現れる、一般に複数の連立1次方程式を適切にまとめて一つの連立1次方程式に帰着させ、精度向上を図る仕組みの導入。以上の改良により、悪条件問題の一部について、精度面で大幅な改善が図られることを確認した。 クロネッカ問題については、一般化されたブロック上三角型行列束(GUPTRI)に対する、前年度開発したアルゴリズムの本格実装を行い、特異な行列束を含む広範な種類の行列束に対してクロネッカ問題が数値的に解けていることを確認した。また、GUPTRIへの前処理を施さない従来のアルゴリズムとの比較を行い、GUPTRIへの前処理を施すことでメモリ使用量が大幅に削減できることを確認した。計算速度については、前処理の導入による改善はみられなかったが、その原因はGUPTRIへの前処理に時間がかかっているためで、今後、前処理部分の高速化が課題になることを明らかにした。また、開発したコードを一般固有値問題や2つの平面代数曲線の交点を求める問題に適用し、数値的に一定の精度で解けることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ジョルダン問題に関して、精度向上のための網羅的な取り組みがほぼ完了できた。クロネッカ問題に関して、GUPTRIに対するクロネッカ標準形・基底を計算するためのアルゴリズムの実装を行い、特異な行列束を含む広範な行列束のクロネッカ問題が数値的に解けることを確認できた。一般の行列束に対するクロネッカ基底を数値的に求める手法の開発が本研究の中心テーマの一つであり、それに向けた最も重要なステップがクリアできたものと考える。また、一般固有値問題や2つの平面代数曲線の交点を求める問題に開発したコードを適用し、応用面でも提案アルゴリズムが有効に活用できることを確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度について。ジョルダン問題、クロネッカ問題ともに、継続して精度面、性能面の改善を図るとともに、応用分野への適用を図る。また、全国共同利用施設に導入されているスーパーコンピュータを活用し、アルゴリズムの並列化手法の検討を開始する。 平成27年度について。逐次処理レベルのアルゴリズムの改善、アルゴリズムの並列化手法の検討を継続するとともに、本研究課題遂行の最終年度にあたり、得られた研究成果の総括を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題はおおむね順調に進展していると判断しているが、23-25年度の3年間をあわせて80万円程度の繰越金が発生している。主な理由は、研究代表者(重原)の大学運営業務が多忙になり、学会等への参加の機会や他機関の研究者にセミナーを依頼する機会を十分に確保できないため、旅費や講師謝金等が当初の計画どおりに執行できていないためである。 平成26年度の本課題の研究経費は、平成26年度の当初の交付予定額(直接経費:70万円、間接経費:21万円)に前年度繰越額(直接経費:80万円程度)を併せ、直接経費150万円程度、間接経費21万円となる見込みである。このうち、直接経費は概ね以下のとおり使用する計画である。物品費(主として重原(代表者)・桑島(分担者)および課題遂行を補助する院生が使用するPCおよびソフトウェアの購入費)約70万円、外部発表のための旅費約20万円、プログラム実装等のために雇用する大学院生の人件費約30万円、講師謝金約10万円、計算機使用料約10万円、その他約10万円。なお、重原および桑島の使用内訳は概ね重原が130万円程度、桑島が20万円程度とする。
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Research Products
(4 results)