2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23560063
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松尾 宇泰 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (90293670)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交流 / 偏微分方程式 / 数値解析 |
Research Abstract |
本研究は,偏微分方程式に対する構造保存数値解法のひとつである「離散偏導関数法」を実用レベルまで引き上げるための基礎研究が主目的である.本年度は以下の2点について研究を行った.(1)高階微分を含む偏微分方程式への対応:「離散偏導関数法」は,これまでエネルギー関数に2階微分以上を含む方程式への対応が困難であったが,L^2射影の技法を導入することで,原理的にその困難が回避できることを示した.さらにSwift-Hohenberg方程式,Ostrovsky方程式など,具体的にいくつかの方程式においてそれを実装・評価し,良好に動作することを確かめた.(2)空間2次元大規模問題の実装評価:「離散偏導関数法」は,構造保存的であることで汎用解法より優れていることが期待されているが,反面,計算コストが大きく真に実用的であるかどうかはこれまで明らかでなかった.そこで2次元Ginzburg-Landau方程式の場合に,「非線形スキーム」「陰的線形スキーム」を実装・評価し,やはり空間2次元以上の場合には素朴な非線形スキームが計算効率上現実的ではないことを明らかにした.他方,陰的線形スキームには自由度があり安定なものを選ぶ指針がこれまで分かっていなかったが,多段Lyapunov関数の視点を導入することで安定性を担保できる見通しを得た.さらに,Ginzburg-Landau方程式などの連立非線形偏微分方程式に対して,その連立性を巧妙に利用して計算コストを下げる「交互型離散偏導関数法」のアイデアを得てそれを実装・評価し,これまで存在する構造保存的スキームの中で最も効率が良いことを確かめた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は「離散偏導関数法」を実用レベルに引き上げるため,数学的,および計算科学的観点の両面から基礎技術を確立することが目的であるが,今年度はその両者において妥当な進捗が得られたため.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究に引き続き,「離散偏導関数法」に関する数学的,および計算科学的観点からの基礎技術確立を目指す.(1)数学的観点においては,今年度得られたL^2射影のアイデアを一般化し,フレームワークとして確立する.(2)計算科学的観点においては,多段Lyapunov関数による安定性理論の確立,および交互型離散偏導関数法のフレームワーク確立を目指す.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度に引き続き,書籍・雑誌等の資料購入,および国内外研究者との情報交流のための旅費として主に使用する.なお今年度予算の若干額を次年度に先送りするが,これは為替相場の変動などで旅費が当初予定額よりも若干低く抑えられたためであり,計画自体に変更があったわけではない.この残額は,次年度同様の目的に有効に活用するものとするが,本研究3年間の間の為替相場を平均すれば自然に解消されると予想される.
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Research Products
(5 results)