2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23560063
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松尾 宇泰 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (90293670)
|
Keywords | 国際情報交換 / 偏微分方程式 / 数値解析 |
Research Abstract |
本研究は,偏微分方程式に対する構造保存数値解法のひとつである「離散偏導関数法」を実用レベルまで引き上げるための基礎研究が主目的である.本年度は以下の2点について研究を行った. (1)L2射影による一般化された離散偏導関数法の確立:「離散偏導関数法」は,これまでエネルギー関数に2階微分以上を含む方程式への対応が困難であったが,前年度までの研究により,L2射影の技法を導入することで,原理的にその困難が回避できることが示されていた.本年度は,そのアイデアを推し進め,実際に任意の偏微分方程式に対して離散偏導関数法の枠組を確立した. (2)多段線形計算公式の安定性解析に関する研究:「離散偏導関数法」は,構造保存的であることで汎用解法より優れていることが期待されているが,反面,計算コストが大きく,それを引き下げねば実用的とは言えないことが指摘されていた.これを解決する一つの工夫が計算公式の多段線形化であるが,それには自由度があり安定なものを選ぶ指針がこれまで分かっていなかった.これに対して,多段Lyapunov関数の視点を導入することで安定性を担保するアイデアを前年度までに提出していたが,本年度は,実際にそのアイデアに基づいて基本的な3次非線形スカラー常微分方程式の場合を詳細に解析した.これにより,一般に多段Lyapunov関数は拡大された位相空間内でLyapunov関数として作用しうることが初めて理解され,解の漸近挙動が詳細に評価できるようになった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は「離散偏導関数法」を実用レベルに引き上げるため,数学的,および計算科学的観点の両面から基礎技術を確立することが目的であるが,前年度に引き続き,今年度もその両者において妥当な進捗が得られたため.
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究に引き続き,「離散偏導関数法」に関する数学的,および計算科学的観点からの基礎技術確立を目指す. (1)数学的観点においては,今年度確立されたL2射影による一般化された離散偏導関数法は,定性的に筋の良い弱形式を発見するツールとなっている可能性があり,偏微分方程式論にもインパクトを与える可能性があるため,それを追求する. (2)計算科学的観点においては,多段Lyapunov関数による安定性理論を完成させ,安定な多段線形計算公式を構築する一般論の確立を目指す.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度に引き続き,書籍・雑誌等の資料購入,および国内外研究者との情報交流のための旅費として主に使用する.なお本研究は次年度が最終年度であるため,特に成果発表のための旅費に重点的に研究費を配分する.
|
Research Products
(7 results)