2011 Fiscal Year Research-status Report
Maxwell方程式の周期多重極法における前処理法と基底関数に関する研究
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23560068
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西村 直志 京都大学, 情報学研究科, 教授 (90127118)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 仁 京都大学, 情報学研究科, 講師 (90359836)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 前処理 / Calderonの式 / Maxwell方程式 / 双対基底 |
Research Abstract |
平成23年度は,理論的には自然と考えられる四角形要素のうち,最も簡単であると考えられる区分線形要素を実装して,その前処理効果を検討した.具体的には,3次元Maxwell方程式の2領域問題(外部問題+補領域の内部問題)において,PMCHWT定式化に基づく積分方程式を四角形要素によって離散化し,これを実装することによって,方程式の正しい並び方とGram 行列による簡単な前処理のみでCalderon の式 に基づく前処理効果が得られることを実証した.より詳細には、まず最初に,これらの基底関数を正しく用いた境界積分方程式の離散行列を得るためのプログラム開発を行なった.非周期問題を考え,多重極法ではない従来型定式化を用いた.次に,内部,外部の物質定数が同じ場合に,理論どおりに少数の反復で収束する前処理行列が得られることを数値的に確かめた.次に,一般の2領域問題において,Calderon の式 に基づく前処理法の構成を行い,考える積分作用素の2乗が2つの固有値を有する特異積分作用素とコンパクト作用素の和となること,その離散化行列がGram 行列により前処理可能であることを示し,数値実験により検証した.さらに前処理の結果,恒等作用素とコンパクト作用素の和となるような,前処理用積分作用素を考案し,その効果を調べた.この結果,正しい基底関数を用いてGram 行列により前処理を行う方法が有用であることが結論された.但し,領域に角がある問題では双対基底を用いた解析は精度の面から必ずしも十分とはいえず、今後の課題となった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の当初目標のうち,四角形要素の基底関数を正しく用いた境界積分方程式の離散行列を得るためのプログラム開発,Calderon の式に基づく前処理法の構成と実装,Galerkin法による離散化行列がGram 行列により前処理可能であることの実証など,主な研究項目はすべて実施し,想定された成果を得ることが出来た.但し,角のある領域での精度の改善が今後の課題となった.しかし,研究が十分早く進行したので,既に国際専門誌に研究内容を投稿し,受理され,電子版が既に出版されたこと,及び電磁界理論シンポジウムにおける新納の講演が学生優秀講演賞を受賞したことなどを考慮すると,上記の判定が妥当であると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究の結果,Galerkin 法による離散化以外にも,選点法を用いる方法も有望であることが判明した.特に,双対基底を使用すると,角のある領域で精度を高めることが必ずしも容易でないことが考えられる.そこで,今後は選点法とCalderon の前処理法を用いた算法についても検討する.また,PMCHWT定式化と並んで,transmission問題の有力な算法であるMueller の方法についても検討を行う.さらには,これらの定式化を多重極化し,これを周期化する.これらの研究と並行して,当初の研究計画どおり,角のある領域でもGalerkin 法によって高精度の解析が可能となるような高次要素や,不連続要素も検討し,従来型の積分方程式法においてその効果を検証する.さらにはこれらの多重極化,周期化も行って行きたい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度も本年の実績とほぼ同様に,成果発表,資料収集を目的とした旅費が主要な研究費の使途であり,加えて,大型計算機の使用料金に支出する予定である.
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