2012 Fiscal Year Research-status Report
Maxwell方程式の周期多重極法における前処理法と基底関数に関する研究
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23560068
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西村 直志 京都大学, 情報学研究科, 教授 (90127118)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 仁 京都大学, 情報学研究科, 講師 (90359836)
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Keywords | Maxwell方程式 / 境界積分法 / transmission問題 / Muellerの定式化 / PMCHWT法 / 反復法 / Nystroem法 |
Research Abstract |
平成24年度は前年度の検討で明かになったMaxwell方程式独特の基底関数の選択に伴う困難さを一旦避け、基底関数を陽に使用しない定式化で、かつ前処理上の問題の生じにくいMuellerの定式化を中心に研究を行った。まず、問題を簡単にするためにHelmholtz方程式の2次元周期transmission問題から考察を開始し、Muellerの定式化の実装を行った。数値実験の結果、Muellerの方法は何種類か定式化することができるが、いずれもPMCHWT定式化に比較して少ない反復回数で解への収束を期待できることが分かった。しかし、Muellerの方法は必ずしも理論どおりに非物理的な共鳴の発生を抑え得るとは限らず、得られる線形方程式は非ゼロではあるが絶対値が非常に小さい固有値を持ち得ること、同様なことはPMCHWT定式化の場合にも多かれ少なかれ発生し得るが、その深刻度はMuellerの方が大きいこと等が分かった。さらに、このことはPMCHWT定式化の固有値が必ず正負対になって現れることと関係していることが理論的考察により明らかになった。次にMaxwell方程式の3次元2周期問題において、Muellerの定式化による積分方程式の数値計算法を実装した。基底関数の導入に伴う困難さを避けるためにNystroem法による定式化を行った。Maxwell方程式の場合、Helmholtzの場合と異なって可能なMuellerの定式化は1通りである。さらにMuellerの定式化はPMCHWT定式化に比較して少ない反復回数で解に収束し、かつ精度もよいことが分かった。しかし、Helmholtzの場合と同様に、Muellerの方法は必ずしも非物理的な共鳴の発生を抑え得るとは限らないことが分かった。この様にMuellerの方法は利点と欠点を有し、必ずしも最良の方法ではないことが結論された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度当初の研究計画のうち、Muellerの定式化に関する部分はほぼ実行できたので、上記の評価とした。しかし、Maxwell方程式に関する結果の論文執筆が次年度送りとなったこと、Muellerの定式化は基底関数に伴う問題の解消と反復回数の低減という意味では非常に有効であることが分かったが、非物理的共鳴という予想外の問題点が発生し、これに伴う対策が今後の課題となったこと、基底関数の研究については進展しなかったこと等からそれ以上の評価とはしなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は本研究の最終目的である複雑な多領域周期問題のMaxwell方程式の高速な数値解法の確立に向けてこれまでの研究成果を再検討し、実用的な数値計算法を完成させることを目標として研究を推進する。具体的には双対基底関数の利用について再検討を行い、考える散乱体の局所的な滑らかさを考慮した近似法について研究する。特に基底関数の不連続性に起因して発生するポテンシャル関数の特異性を取り除くための条件を検討する。この研究を通して一昨年の研究で明らかになった双対基底を用いたPMCHWT定式化の精度悪化の原因を考察し、これを改善することを試みる。さらに、Mueller定式化の悪条件発生機構をより詳しく検討し、その適用範囲を精査する。最後にこれらの定式化の多領域問題への適用可能性を数値実験により検討し、必要に応じてこれらの結合解法を模索することによって効率のよい数値計算法を確立する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度はおもに資料収集、成果報告等の旅費に使用することと、一部の数値計算の研究補助や、専門知識の提供に対して謝金を支払うこと、その他消耗品の購入などを予定している。
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