2011 Fiscal Year Research-status Report
超微細粒銅は機械・機能性材料としての耐疲労特性を有するか
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23560093
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
後藤 真宏 大分大学, 工学部, 教授 (30170468)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 結晶粒微細化 / 銅 / 疲労 / き裂進展 / 切欠効果 |
Research Abstract |
実際の機械・電気電子部品はき裂の発生起点としての応力集中部を有し、負荷応力振幅も変動する。本研究では、形状および位置の異なる応力集中部を有する部材の疲労損傷を組織変化と微視的き裂の挙動の関係に注目して明らかにし、機械電子部品の設計データおよび耐疲労特性の改善のための物理的背景を示す。そのため、1)欠陥位置とき裂進展挙動、2)応力変動とき裂進展機構、3)超微細粒組織の切欠効果についての研究を並行して行う。それぞれの項目について、本年度得られた成果を以下に示す。1) 欠陥位置とき裂進展挙動:本研究では、等軸結晶を有するにも関わらず疲労損傷発生形態にECAP最終せん断面と関係した異方性が認められる本材料のき裂発生位置による疲労強度とき裂進展挙動の違いを解明する。本年度は、せん断面が軸方向と45°となる位置に微小孔を加工し,孔からのき裂進展挙動を検討した。その結果、き裂進展方向に応力レベル依存性があることを確認した。 2) 応力変動とき裂進展機構:本研究では、き裂の発生個所を特定した試験片を用いて、二段二重重複応力下での疲労試験を行い,き裂進展挙動に及ぼす応力変動の影響を検討した。これにより,応力変動がき裂進展経路や組織変化に及ぼす影響が明らかになった。さらに、1)欠陥位置とき裂進展挙動の結果と併せて考察し、高応力と低応力におけるき裂進展機構を解明した。 3) 超微細粒組織の切欠効果:一般に機械・電気電子部品は応力集中部を有するので、超微細粒銅の切欠効果を明らかにすることは設計上重要である。本研究では、円周切欠きを有する試験片の疲労試験を行い、切欠効果を明らかにする。本年度は、線形切欠力学による評価がほとんど行われていない通常結晶粒寸法の銅の疲労試験を行い,各種形状の切欠材のS-N曲線を求め、分岐点の切欠半径の評価を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
形状および位置の異なる応力集中部を有する部材の疲労損傷を組織変化と微視的き裂の挙動の関係に注目して明らかにし、機械電子部品の設計データおよび耐疲労特性の改善のための物理的背景を示すため、3種類の観点の異なる研究を並行して行った。3つの研究の達成状況は以下の通りである。1) 欠陥位置とき裂進展挙動:欠陥位置についてはこれまでの研究から、軸方向とせん断面の成す角が45°と90°に穿孔することが考えられるが、本年度は45°位置孔についての研究を実施した。その結果、き裂は高応力下では45°方向に直線的に、低応力下では主応力方向に直角にジグザグの経路で進展した。進展経路と組織変化のEBSD解析を行い、ほぼ予定通りき裂進展速度などの評価を完了した。2) 応力変動とき裂進展機構:45°位置孔から発生させた微小き裂応力に二段二重重複応力試験を行った。その際に、応力切換え前後のき裂先端の損傷状態をOM、SEMにて連続観察し、特異な進展挙動を明らかにした。さらに,上記1)で行った、研究結果と本研究結果を総合的に解析し本年度の予定を超え、高応力下と低応力下におけるき裂進展機構の解明も行った。3) 超微細粒組織の切欠効果:超微細粒銅の切欠効果を検討するには、通常結晶寸法の銅の、切欠効果に関するデータ(分岐点の切欠半径等)が必要である。鉄鋼材料やアルミ合金については、分岐点の切欠半径が求められているが、純銅では得られていない。そこで、通常結晶粒の銅の分岐点を求める研究を行った。切欠深さと切欠半径を系統的に変化させた試験片についてS-N曲線を求め、線形切欠き力学により評価を行い、分岐点の切欠半径を導出するという当初の研究計画を達成した。以上を総合した結果、実験項目2)は当初研究目的をやや超える成果を得たが、研究全体としてしては、「おおむね順調に進展している」と判定した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、今年度に引き続き3つの研究計画を並行して行う。すなわち、「1) 欠陥位置とき裂進展挙動」については、今年度の45°位置の結果を踏まえ、次年度は90°位置孔について孔からの微小き裂進展挙動を連続観察により明らかにする。その際、表面の連続観察を通して、各応力レベルにおけるき裂先端近傍の表面損傷の形成挙動を連続観察するとともに、45°位置との損傷形成挙動の違いを明らかにする。さらに、き裂進展速度の計算と応力拡大係数による比較、およびき裂経路と周辺組織との関連をEBSD解析を通して明らかにする。「2) 応力変動とき裂進展機構」については、今年度の45°位置の結果を踏まえ、次年度は90°位置孔について、孔から発生させた微小き裂に二段二重重複応力試験を行い、応力切換え前後のき裂先端近傍の表面損傷の負荷順序による違いを比較検討し、き裂進展に及ぼす応力変動とECAP組織の関連を検討する。「3) 超微細粒組織の切欠効果」については、本年度明らかにした通常結晶粒銅の結果を考慮して、次年度は超微細粒銅の分岐点の切欠半径を求めるための研究を遂行する。すなわち、切欠深さと切欠半径を系統的に変化させた試験片についてS-N曲線を求め、線形切欠き力学により評価を行い、これまで、切欠効果についての知見が全くない超微細粒銅の切欠効果、特に分岐点の切欠半径を明らかにし、粗大粒銅とのメカニズムの違い・共通点などを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、設備物品の購入は無く、研究遂行に要する消耗品類、研究成果発表のための旅費および調査研究のための旅費、およびその他経費(論文掲載料・学会登録費など)を使用する計画である。なお、本年度の使用予定研究費から54,252円の残額が生じた。これは、東日本大震災により研究費の減額有りうるので6月時点で一定額を超えて使用した分については、詳細が確定する9月まで使用を凍結する旨の指示が来たためである。すなわち、6月時点で新規設備を購入したためこの時点において設定額を超えて支出したため、その後開催された成果発表のための国際会議(国内)への出席旅費を執行できず、この未執行分を繰り越すことになった。この分については、次年度開催される国際会議の旅費として使用する予定である。
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Research Products
(18 results)