2011 Fiscal Year Research-status Report
超高温ガスタービン用遮熱被膜の高温強度に及ぼす熱負荷の影響に関する研究
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23560098
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
金子 堅司 東京理科大学, 工学部, 教授 (40016803)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 溶射被膜 / 層間はく離 / せん断強度 / 有限要素法 / 応力特異性 / 疲労 / 複合応力 / 熱応力 |
Research Abstract |
せん断はく離強度を評価するねじりピンテスト法の有用性を検討する為にピン径3種類、被膜厚さ3種類の条件下での実験及び被膜と基材との界面端部の特異場応力解析を行い,以下の知見を得た.(1) 被膜のはく離がピン界面端部で発生していることから,せん断はく離強度が正確に測定できることを確認した. (2) 被膜が200μm程度と薄い場合、被膜内部での破断が見られ、正確なはく離強度評価とならないこと、400μm程度以上であれば界面でのせん断はく離が生じ、安定した強度評価が可能である.(3) わずかな引張り応力の存在によって被膜内の破断が生じ、はく離強度の低下を招く.(4)有限要素解析によって得た界面端部に生じるせん断・引張応力特異場応力分布を両対数座標で直線近似した結果,引張りとせん断応力の混合負荷モードに対して,はく離強度基準を界面端部の応力の高さを表す界面強度指数Ks及びKaの関数により表す事ができる. つぎに、ピンテスト専用のねじり引張り疲労試験機を試作しWC-Co溶射被膜の疲労はく離強度実験を行った結果,以下の結論を得た.(1)ピン径が大きくなれば見かけ上疲労強度は低くなるが、疲労強度測定上ピン径はφ3でもφ4でも有効である.(2)引張り荷重を与えることにより、疲労強度は低下することを示し、引張りとねじりの複合応力下での試験が可能であること示した.(3)単純ねじり破壊試験と同様、繰り返しねじり疲労はく離試験においても、小さな引張り応力負荷下でも界面ではなく被膜内部での破断が生じることから、界面の強度評価上注意する必要がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的の1つは新しい被膜のはく離強度を測定する方法を提案し、確立するところにある。これについてはWC-Co硬質被膜の場合に対して初年度において達成した。また、遮熱被膜のはく離強度は極めて低いので、従来申請者が保有している大型の試験装置では誤差が生じる恐れが生じたことから、最初の計画にはなかった専用の測定試験装置を試作し、比較的低荷重でのはく離強度およびはく離疲労強度を精確に測定できることを確認した。WC-Co硬質被膜については被膜の弾性係数などが既知であったことから界面端部の特異応力場解析も行い、提案した本試験方法がせん断はく離強度評価に極めて有効であることを立証した. 本研究の目的の2つ目は遮熱被膜の剥離評価である。試験片の基材は製作済みであるから、全体としての達成度は40%である。本来であれば初年度において遮熱被膜に対する試験を実施する予定であったが、試料作成が基材が硬くて製作に時間を要したことと、こうして製作した貴重な試験片を無駄に出来ないことで、専用の試験装置を開発したことから拙速な試験の実施を延期した事情がある。
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Strategy for Future Research Activity |
第2年度には(1)ピンテスト試料による遮熱被膜に対するせん断はく離試験および(2)はく離疲労強度試験を実施する。また、(3)板状試料によるギロチンせん断疲労はく離試験を行う。当初からの懸念であったピンと躯体との焼き付きについては、少なくとも焼き付き防止のセラミック塗料を薄くピンに塗布することで十分に防止できることを確認している。また、二層被膜であることからボンドコート塗布後、一端ピンを引き抜く必要があることから、その時点でピンと躯体との焼き付きについてはチェックできるので高温での溶射処理による不都合は十二分に避けられる見通しである。また、(4)有限要素法による弾塑性解析に用いるため、被膜や酸化層の機械的特性及びそれらの加熱負荷依存性を押込み試験結果を用いる逆解析によって求める。リング試料による検討は、遮熱被膜及び硬質被膜について行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の使用計画は、試験片の作成費が主であり、その中には溶射粉末の購入費が含まれる。また、学会参加費・旅費として使用される。
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