2012 Fiscal Year Research-status Report
超高温ガスタービン用遮熱被膜の高温強度に及ぼす熱負荷の影響に関する研究
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23560098
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
金子 堅司 東京理科大学, 工学部, 教授 (40016803)
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Keywords | 溶射被膜 / 層間剥離 / せん断強度 / 有限要素法 / 応力特異性 / 遮熱被膜 / 加熱効果 |
Research Abstract |
23年度において溶射被膜のせん断はく離強度を直接評価するねじりピンテスト法の有用性をWC-Co被膜に対して実験的かつ解析的な検討によって明らかにすることができた。続く24年度においては遮熱被膜に対する実験的検討を行い以下の知見を得た。なお、ピン径3種類、被膜厚さ1種類の条件下で試料の作成を行ったが、ピン径2mmでは技術的な限界からピンをインコネルで製作できず、ピン径3,4mmの試料からしか有効な結果が得られなかった。 (1)遮熱被膜は二重被膜であり、トップコート(SYZ)とアンダーコート(CoNiCrAlY)との付着力を測定するためにピンテスト試料にアンダーコート処理した後ピンをわずかにねじることでアンダーコートはピン端部外周で分断され、その後にトップコートを溶射すれば、求める試料の作製が可能である。(2)トップコートのはく離がアンダーコートとの界面で発生していることから,トップコートのせん断はく離強度が直接正確に安定測定できることを確認した.(3) 高周波で1000℃に加熱したブロックを被膜に接触させ、被膜の加熱処理によってトップコートの付着力が上昇することを確認した。 (4) ピン径によって見かけの付着強度は異なるが、加熱処理による付着強度の上昇度合いは同様に観察され、ピン径が3~4mmで有効な結果が得られることを確認した。 実試料の被膜の変形特性を測定するまでには至っていないが、従来得られている他研究者によるトップコートとアンダーコートの変形特性を用いた有限要素解析を行い、せん断応力負荷モードに対して,はく離強度基準を界面端部の応力の高さを表す界面強度指数Ksにより表す事ができること、およびその値がピン径に依らず同じ値になることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的の1つは新しい被膜のはく離強度を測定する方法を提案し、確立するところにある。これについてはWC-Co硬質被膜の場合に対して初年度において達成した。 また、遮熱被膜のはく離強度は極めて低いので、従来申請者が保有している大型の試験装置では誤差が生じる恐れが生じたことから、最初の計画にはなかった専用の測定試験装置を試作し、比較的低荷重でのはく離強度およびはく離疲労強度を精確に測定できることを確認した。 WC-Co硬質被膜については被膜の弾性係数などが既知であったことから界面端部の特異応力場解析も行い、提案した本試験方法がせん断はく離強度評価に極めて有効であることを立証した. 本研究の目的の2つ目は遮熱被膜の剥離評価である。これについては昨年第二年目において試料を作成し、加熱処理前後のせん断付着強度を測定した。世界的にも画期的な成果であると自負するものである。さらにこれに対応する応力解析を実施し、基本的に本試験法によってピン径に依らず被膜システムに固有な一定の付着強度が測定できることを確認した。問題点としては、実試料について被膜の変形特性を調べていない、ということと応力特異場におけるせん断変形モードが第三モードであって第二モードではない、ということである。最終年度においてはこうした問題点を克服することも含め、鋭意研究を進めてゆく。 したがって、全体としての達成度は85%である。
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Strategy for Future Research Activity |
第3年度には(1)ピンテスト試料による遮熱被膜に対するせん断はく離疲労強度試験および(2)実試料の遮熱被膜の変形特性を調べ、得られた値を用いての有限要素法解析を行い、付着強度評価を行う。また、(3)板状試料によるそぎ落としせん断はく離試験を行う。押し当てジグの改良により界面での剥離が生じる手法の検討と対応する応力解析によりピンテスト法による結果との対応関係について検討する。 なお、被膜や酸化層の機械的特性及びそれらの加熱負荷依存性については押込み試験結果を用いる逆解析によって求める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の使用計画は、試験片の作成費が主であり、また、学会参加費・旅費として使用される。
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