2013 Fiscal Year Research-status Report
超高温ガスタービン用遮熱被膜の高温強度に及ぼす熱負荷の影響に関する研究
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23560098
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
金子 堅司 東京理科大学, 工学部, 嘱託教授 (40016803)
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Keywords | 溶射被膜 / 界面強度 / せん断剥離 / 応力特異性 / 剥離試験 / 遮熱被膜 / WC-Co被膜 |
Research Abstract |
本研究の目的は,超高温用ガスタービンの翼を保護するセラミック遮熱被膜のせん断剥離強度を正確に評価することであり,これによって翼の安全性や寿命評価を正確に確認することが可能となる.また,新しい手法の開発にも大いに貢献できる.従来は室温下においてもせん断剥離強度の正確な測定は困難であった.本研究の実施によってこれが可能となった. 即ち,溶射被膜のせん断はく離強度を測定する方法としてねじりピンテスト法を提案し、WC-Co硬質被膜の場合に対して実験と対応する解析を行い,正確なせん断剥離強度の評価を行うことに成功し,試験法として確立した。これを受けて高温ガスタービン用の遮熱被膜のせん断剥離強度の評価を行い,比較的脆弱なしかも複合被膜に対する試験方法も確立した.その上,熱負荷を与えた場合の実験法を確立し,従来評価が出来なかった溶射被膜の高温下におけるせん断剥離強度の評価法を確立したことで本研究の目的は十分に達成されたと考える.加うるに負荷の繰り返しによる疲労強度も正確な負荷の繰り返し試験が可能なことから正確なS-N曲線を得ることが出来ることも確認し,せん断剥離疲労試験法の確立も行った. 今後の課題として,ねじりピンテスト法では応力特異場におけるせん断変形モードがモードIIIであってモードIIではないので変形モードの違いによるせん断剥離強度の比較検討が必要となる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実績の項で述べたとおり,所期の目的は十分に達成されたと考える.一方で,ピンテスト試料及びその疲労試験を正確に行うためには実験装置も含め,製作に手間とコストがかかることからより簡便な試験法が実際は望まれる。また,すでに述べたように,せん断の変形モードがタービン翼の被膜にき裂が生じ,き裂底に生じるせん断応力によって剥離が発生進行する過程を考えるとモードIIでのせん断剥離強度が重要であることから,ねじりピンテスト法では対応できない. そこで,板材に溶射処理したものをカッターによって細分した小試験片を固定して被膜に界面に平行なせん断力を負荷して被膜をそぎ落とす試験法から得られる付着強度がピンテスト法から得られる結果と関連づけられれば極めて有益となろう。 本研究において,WC-Co溶射被膜に対して実際にそうした試料を作成してそぎ落としせん断試験と対応する三次元有限要素法応力解析を行い、①被膜のそぎ落としせん断試験での見かけの付着強度は試料の寸法(横幅、高さ)、せん断力の負荷位置(界面からの距離)、などによって異なること、②したがって実験の試料や境界条件に正確に対応した解析を行い、破断位置近傍の応力分布等を吟味する必要があること,③しかし、逆にいえばこうした実験と解析をきちんと行えば被膜の付着強度評価ができること,④従って,ねじりピンテスト法によるモードIIIの結果とせん断そぎ落とし法によるモードIIの結果の関連性が明確になる可能性が十分にあること,などを明らかにしており,従来出来なかった破壊力学の基本的な問題にも踏み込んだ貢献が出来ると思われる. こうした成果を考慮すれば,当初の計画以上の進展が見られると評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
ねじりピンテスト法では界面端部の応力特異場におけるせん断変形モードがモードIIIであって実機で剥離機構として予想されるモードIIではないので変形モードの違いによるせん断剥離強度の比較検討が必要となる. 多くの成果が口頭発表するだけとなっているので成果を著名なジャーナルに発表する.国際的にも遮熱被膜のはく離強度評価法についてはその基準化の議論が行われている最中でもあり,早急な対応が望まれる.既にいくつかは投稿しているが,更に進めてゆかなくてはならない.そのために若干の研究費を次年度に繰り越しさせて頂いた.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究成果の論文を学術雑誌に投稿しているが,校閲などに時間がかかり,アクセプトされる時期が次期年度にずれてきたため,掲載に係る経費を次年度に使用できるように確保しておく必要がある. 研究成果を学術雑誌に投稿・掲載するに係る経費および旅費として使用される.
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